「分子をくっつけたり、離したりする道具をつくる!?」
分子を反応させて、変換する道具をつくる
有機化学のなかには、「物づくりをするための道具づくり」という分野があります。ある一定の目的をもって、有機化合物に金属(例えば鉄や銅、コバルトなど)を触媒として加えると、新しい化合物ができたりします。意図したものができれば良いし、ときには、意図していない新しい分子構造を持った化合物ができたりします。つまり、思った通りの「道具」ができたり、思いもしなかった「道具」を発見することがあるのです。この新しい化合物ができる「道具」を「なにかほかのものをつくるときに使えないか?」と考えるわけです。
つくられた道具は、次世代の医薬品候補に
例えば、「このサイズのペンチをつくろうと思っていたけど、違うサイズの別のものができてしまった」とします。一見、失敗かと思われますが、使ってみたら意外に使い勝手がよいという場合があります。
このつくり出された「道具(化合物や方法)」は、いろいろなものをつくるのに役立ちます。それは、医薬品の候補となる化合物だったり、次世代の電子材料になる有機化合物になったりします。古い「道具」では、新しいものはできません。そのため、新しい「道具」を生み出して、世界に向けて発表をすることは、ほかの誰かが新しいものを生み出すためにも、とても重要なことなのです。
ビタミンD3で、制がん作用のある新薬を開発中
天然のビタミンD3(化合物)は、カルシウム代謝を助ける作用があることから、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療薬として知られています。このビタミンD3の構造を少し変えると、カルシウム代謝を起こさないで、「制がん」に結びつく効果があるということがわかってきました。そのほかにも、プロスタグランジンという、体内の生理活性物質からアトピー性皮膚炎の炎症を抑える軟膏を生み出すことができました。これらのように、天然の化合物の構造を少し変えることで、新しい誘導体(化合物)を作った成果です。新たな「道具」づくりは、こうした新薬の開発につながる場合もあるのです。
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先生情報 / 大学情報
神奈川大学 化学生命学部 生命機能学科 教授 岡本 専太郎 先生
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有機化学先生への質問
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