未活用の「テラヘルツ波」を手軽に生み出す、その先にある未来

未活用の「テラヘルツ波」を手軽に生み出す、その先にある未来

小型・低コストのテラヘルツ波発生デバイス

電磁波の中で、電波と光(赤外線)の間の周波数(0.1~10THz)を持つ「テラヘルツ波」は、これまで応用に期待されながらも技術的に扱いづらく、あまり活用されていませんでした。その応用を促進するために、テラヘルツ波の発生デバイスは欠かせません。すでにあるデバイスには、大型でコストがかかる、限られた周波数のみを発生するなど、手軽に使えないという難点があります。
そこで、小型・低コストで、かつ周波数を自由に選べるテラヘルツ波の発生デバイスが研究されています。そのカギは、半導体を積層した「超格子構造」を作ることで、電子の波の状態を変える技術です。現在、スマートフォンなどにも使われているような化合物半導体を組み合わせて、超格子構造が研究されています。

半導体の積層構造で電子の性質を制御

量子力学の見方では、電子には「粒」の性質と「波」の性質があります。半導体の中で電子が運動するときの波長は、ナノメートル(10⁻⁹メートル)のレベルです。2種類の半導体材料をナノメートルレベル、つまり原子数個~数十個というレベルで交互に規則正しく積層した構造が、「超格子」です。この超格子構造によって、中にいる電子の波を制御していろいろな性質を引き出せるのです。
特に、超格子構造に直流電圧をかけると電子が高速で振動するという面白い性質が現れ、同じ周波数で電子から電磁波が放射されます。このような仕組みにより、電圧で周波数を自由に選んでテラヘルツ波を生み出すことができます。

テラヘルツ波で新たな発見の可能性

テラヘルツ波は、大容量の無線通信への応用に期待されています。また、X線よりも安全にモノを透視する「非破壊検査」の手段にも応用できます。これまで未解明だった、電気を通すプラスチック(有機半導体)の中の電子の運動を調べる研究にも、テラヘルツ波の透過の性質が応用されています。テラヘルツ波によって、さまざまな分野で新たな発見や発明が生み出される可能性があるのです。

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長岡技術科学大学 工学部/工学研究科 電気電子情報工学分野  教授 鵜沼 毅也 先生

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電子工学、応用物理学、物性物理学

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メッセージ

高校で学ぶ物理の少し先に、最先端の面白い領域が広がっています。そこに取り組むときに大切になるのが、物理の公式を暗記しているだけではなく、それがどのように導き出されたのか、原理原則や考え方を深く理解していることです。この姿勢が身についていれば、高度な問題に当たるときにも解決策が見えてきます。また、大学の物理学やさまざまな工学では、ほぼ必ず数学を道具として使います。高校数学はその基礎になるので、しっかり勉強しておきましょう。数学を使えることは、大学でどの最先端の領域に進んでも強みになるはずです。

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