世界の環境問題を解決する極小世界のナノテクノロジー
古代から変化しないと信じられてきた「金」
いざというとき頼りになるのは、金の延べ棒。はるか昔、古代エジプト・ツタンカーメン王の時代からずっと、金は人類にとってもっとも価値の高い金属とされてきました。なぜ金だけが特別なのでしょうか。それは金だけがその美しい輝きを永遠に保つからです。これを化学的には「金は不活性」と表現します。金は絶対にさびたりしない、つまり化学的に変化することはない、と誰もが信じていました。
金が赤色になり、銀が黄色に変わるナノの世界
この定説を根底からくつがえしたのがナノテクノロジーです。例えば金を極限まで細かく砕いて、ナノメートルの世界、すなわち10億分の1メートルぐらいまで小さくすると、金はその性質をガラッと変え、色まで赤くなるのです。金の延べ棒は永遠にゴールドだけれど、ナノサイズの金はがんがん化学反応を起こします。このようにナノレベルまで小さくすることで、物質の性質が変化する現象を「サイズ効果」と呼びます。
21世紀の錬金術が拓く人類の未来
環境問題を解決する切り札として期待されている燃料電池自動車ですが、実は一つ、致命的な欠点を抱えています。それは白金(プラチナ)を大量に必要とすることです。酸素と水素を燃やし電気エネルギーを発生させるために欠かせない触媒が白金なのです。ところが白金はいわゆるレアメタル、ごく限られた量しか地球上には存在しません。いくら燃料電池自動車が理想とはいえ、世界中の車をまかなうには白金が足りないのです。
そこで期待されているのがサイズ効果です。サイズ効果を活用すれば、白金と同じ触媒効果を持つ物質を見つけられるはずです。白金そのものを人工的に創ることはできなくとも、同じ触媒効果を持つ物質ならば探し出せると考えられます。
この意味でナノテクノロジーは21世紀の錬金術と言えます。そして人類の未来は、この新たな錬金術にかかっているといっても過言ではないのです。
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