求められる生命の教育「プレコンセプション(受胎前)ケア」
妊娠は奇跡の連続
日本では女性の社会進出などによって、出産年齢が高く推移しています。高齢になるほど自然妊娠が難しく、顕微鏡を使い精子と卵子を受精させて、タイミングを見て子宮に戻す「顕微授精」で生まれる生命は約11~12人に1人にのぼります。
生殖医療の現場では「妊娠がこんなに難しいとは知らなかった」という声を耳にします。自然に受精した胚の約40%は子宮に着床することなく、次の月経で流れてしまいます。妊娠は当たり前のできごとではなく、小さな奇跡の連続なのです。
胎児期の環境が、生涯の健康を左右する
38週間の妊娠期間に、1つの受精卵が細胞分裂を繰り返しながら、60兆の細胞からなる生命へと成長していきます。女性が妊娠の可能性に気づくのは、早くて受精後2週間程度が経過する、次の月経予定日の頃です。その頃から3~4週間の間にはもう、赤ちゃんの健康を左右する体の主要な部分が完成しています。
「胎児期や誕生直後の健康状態が、将来にわたり健康を左右する」というDOHaD(病気の発生起源)説があります。10~20代の日本女性の約5人に1人がBMI18.5以下の低体重ですが、母体がやせていると赤ちゃんも低体重で生まれるリスクが高くなり、将来的な生活習慣病のリスクも高まるといわれています。
健康に生まれるべき生命を守るために
医療の進歩により、小さく生まれた赤ちゃんでも命を救えることが増えました。一方で、知識さえあれば健康に生んで育むことのできた生命を守れていない現状もあります。看護の祖であるナイチンゲールは「われわれは次世代に生命を健康につないでいく責任を持っている。健康の法則に従うように、看護が支えていくべきである」という言葉を残しています。健康な生命を次世代へつなぐために、妊娠を計画するよりも前から女性とその家族を支援する「プレコンセプション(受胎前)ケア」が、少しずつ広がっています。学校の性教育と同時に受けられるように、教育プログラムの開発も行われています。
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先生情報 / 大学情報
大阪歯科大学 看護学部 看護学科 教授 福山 智子 先生
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