講義No.14098 看護学

求められる生命の教育「プレコンセプション(受胎前)ケア」

求められる生命の教育「プレコンセプション(受胎前)ケア」

妊娠は奇跡の連続

日本では女性の社会進出などによって、出産年齢が高く推移しています。高齢になるほど自然妊娠が難しく、顕微鏡を使い精子と卵子を受精させて、タイミングを見て子宮に戻す「顕微授精」で生まれる生命は約11~12人に1人にのぼります。
生殖医療の現場では「妊娠がこんなに難しいとは知らなかった」という声を耳にします。自然に受精した胚の約40%は子宮に着床することなく、次の月経で流れてしまいます。妊娠は当たり前のできごとではなく、小さな奇跡の連続なのです。

胎児期の環境が、生涯の健康を左右する

38週間の妊娠期間に、1つの受精卵が細胞分裂を繰り返しながら、60兆の細胞からなる生命へと成長していきます。女性が妊娠の可能性に気づくのは、早くて受精後2週間程度が経過する、次の月経予定日の頃です。その頃から3~4週間の間にはもう、赤ちゃんの健康を左右する体の主要な部分が完成しています。
「胎児期や誕生直後の健康状態が、将来にわたり健康を左右する」というDOHaD(病気の発生起源)説があります。10~20代の日本女性の約5人に1人がBMI18.5以下の低体重ですが、母体がやせていると赤ちゃんも低体重で生まれるリスクが高くなり、将来的な生活習慣病のリスクも高まるといわれています。

健康に生まれるべき生命を守るために

医療の進歩により、小さく生まれた赤ちゃんでも命を救えることが増えました。一方で、知識さえあれば健康に生んで育むことのできた生命を守れていない現状もあります。看護の祖であるナイチンゲールは「われわれは次世代に生命を健康につないでいく責任を持っている。健康の法則に従うように、看護が支えていくべきである」という言葉を残しています。健康な生命を次世代へつなぐために、妊娠を計画するよりも前から女性とその家族を支援する「プレコンセプション(受胎前)ケア」が、少しずつ広がっています。学校の性教育と同時に受けられるように、教育プログラムの開発も行われています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪歯科大学 看護学部 看護学科 教授 福山 智子 先生

大阪歯科大学 看護学部 看護学科 教授 福山 智子 先生

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母性看護学、看護学、助産学

先生が目指すSDGs

メッセージ

周産期医療に携わると、生きているということは奇跡だと感じます。高校時代には、生きる意味を見失うような、つらい日もあるかもしれません。でも、1つ1つDNAが違う卵子と精子の中から、あなたは選ばれて生まれたのです。きっと、あなたにしかできない何かがあるはずです。看護師をめざす学生からは、「勉強について行けない」と相談されることがあります。ゆっくり考えて、じっくり観察できることを強みにすればいいのです。ゆっくりというのは、寄り添う力になります。自分を変えずに、方法を一緒に考えましょう。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪歯科大学に関心を持ったあなたは

大阪歯科大学は「医療系総合大学」としてさらなる進化を目指し、歯学部、医療保健学部に加え、チーム医療の現場でますます重要になっている看護師を養成するため、2024年4月に看護学部を開設しました。

京都・大阪の中心地から30分圏内(京橋から約20分、丹波橋から約13分)の楠葉キャンパスは、最寄りの京阪「樟葉(くずは)」駅(特急停車駅)から徒歩5分。ここに新たに看護学部のための新棟があります。