体と心に触れるケア 患者が「気持ちいい」と感じる看護とは?
日常的に患者に触る・触れる
看護師は、日常的に患者に触れることがあります。患者の脈を測ることもあれば、「寒気がする」という患者の皮膚の温度を確かめるために触ることも、また、患者が痛みを訴える部分に触れることもあります。看護師にとって、患者に触る・触れるというのは日常的な行為といえます。
患者が「気持ちいい」と感じる瞬間
看護は、基本的に対象者の「安全」「安楽」「自立」を考慮して行われます。このうち「安楽」は心身に苦痛がなく、穏やかで楽な状態を意味します。患者が「気持ちいい」と感じる看護現象を探求するため、過去の研究では、看護師が入院患者の体を拭く、足浴をするといった身体的ケアの場面を約8ケ月間にわたり観察・記録し、患者に聞き取りをし、次のようなことがわかりました。
(1)タオルの温度などが患者にとって「ちょうどいい」と感じられる。(2)患者が楽、あるいは大丈夫を感じられる。(3)看護師の声かけなどから配慮や心遣いを感じられる。これらのことが、患者に「気持ちいい」と受け取られている、ということです。さらに、寝たきりの患者が、冬に体を拭いてもらった時に「季節が春になったようだ」「樹海を通って山頂に来たようだ」と、時間や空間の境界や隔たりがなくなる感覚を抱くケースがありました。また、患者のケアをする看護師も「心地よい」と感じるケースがあることも判明しました。
コロナ禍で考える、看護師が患者に触ることの意義
上記の研究結果から、患者が「気持ちいい」と感じる体験には、看護師の触る・触れるという行為が重要な役割を果たすことがわかりました。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響下では、看護師も気軽に患者に触れられなくなりました。手袋をし、防護服を着て患者と接する、なるべく患者との接触を避けるといった状況では、日常的な行為が制限され、看護師もストレスを感じます。こうした中で、看護師が患者に触る・触れるという行為の重要性を再確認することやその行為の意味に改めて注目されています。
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関東学院大学 看護学部 教授 島田 多佳子 先生
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