自閉スペクトラム症の人たちへの適切な看護ケアは?
手探りの看護
10年ほど前に確立された「自閉スペクトラム症」の概念は精神科領域の中では比較的新しい概念です。これは、特性の有無によって「自閉症」や「アスペルガー症候群」などと線引きをせずに、「症状がグラデーションになっている」ととらえるものです。看護のあり方については、まだしっかりとした教科書は作られておらず、症状を理解したケアが浸透しているとは言えません。知識不足のまま手探りで看護をしている人がいるのも実情です。自閉スペクトラム症の人に看護師がどう関わるか、患者が看護師の関わりに対して何を考えているか研究が進んでいるところです。
具体的にわかりやすく伝える
自閉スペクトラム症の人は臨機応変な対人関係が苦手な傾向にあり、具体的にわかりやすく伝えるのが看護のポイントです。例えば、入院時に「12時に昼食が出るので食堂に来て食べてください」と説明した場合、12時5分や11時55分に提供された昼食に対して「自分のご飯は12時に来るので、これは食べません」と反応するケースがありました。「11時45分から12時15分の間に昼食が出ます。その時になったらお呼びします」などと伝え方を変えると、患者と看護師の間にずれが生じなくなります。
このように、ほかの入院患者と同じような説明では、何をしてほしいかよくわからないため周囲からネガティブな評価をもらうことがあります。それが「自分は人とうまくやれない」という思いを強くさせるケースもあるのです。
有病率が高い日本
精神疾患の中でも統合失調症やうつ病などの看護ケアの方針はありますが、自閉スペクトラム症に関する指針はまだ定まっておらず、参考書がいくつか出てきた段階です。日本の自閉スペクトラム症有病率は推定3~4%とも言われており、2%前後の欧米諸国より高くなっています。だからこそ、いじめや嫌な思いを経験することもある患者たちに適切なケアが提供できるように、さらには看護師の頑張りが報われるためにも、ガイドライン策定につながる研究の進展が期待されています。
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