講義No.14271 看護学

自閉スペクトラム症の人たちへの適切な看護ケアは?

自閉スペクトラム症の人たちへの適切な看護ケアは?

手探りの看護

10年ほど前に確立された「自閉スペクトラム症」の概念は精神科領域の中では比較的新しい概念です。これは、特性の有無によって「自閉症」や「アスペルガー症候群」などと線引きをせずに、「症状がグラデーションになっている」ととらえるものです。看護のあり方については、まだしっかりとした教科書は作られておらず、症状を理解したケアが浸透しているとは言えません。知識不足のまま手探りで看護をしている人がいるのも実情です。自閉スペクトラム症の人に看護師がどう関わるか、患者が看護師の関わりに対して何を考えているか研究が進んでいるところです。

具体的にわかりやすく伝える

自閉スペクトラム症の人は臨機応変な対人関係が苦手な傾向にあり、具体的にわかりやすく伝えるのが看護のポイントです。例えば、入院時に「12時に昼食が出るので食堂に来て食べてください」と説明した場合、12時5分や11時55分に提供された昼食に対して「自分のご飯は12時に来るので、これは食べません」と反応するケースがありました。「11時45分から12時15分の間に昼食が出ます。その時になったらお呼びします」などと伝え方を変えると、患者と看護師の間にずれが生じなくなります。
このように、ほかの入院患者と同じような説明では、何をしてほしいかよくわからないため周囲からネガティブな評価をもらうことがあります。それが「自分は人とうまくやれない」という思いを強くさせるケースもあるのです。

有病率が高い日本

精神疾患の中でも統合失調症やうつ病などの看護ケアの方針はありますが、自閉スペクトラム症に関する指針はまだ定まっておらず、参考書がいくつか出てきた段階です。日本の自閉スペクトラム症有病率は推定3~4%とも言われており、2%前後の欧米諸国より高くなっています。だからこそ、いじめや嫌な思いを経験することもある患者たちに適切なケアが提供できるように、さらには看護師の頑張りが報われるためにも、ガイドライン策定につながる研究の進展が期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

石川県立看護大学 看護学部 看護学科 精神看護学講座 講師 大江 真吾 先生

石川県立看護大学 看護学部 看護学科 精神看護学講座 講師 大江 真吾 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

精神看護学、発達障害

メッセージ

ストレスはしっかり解消していきましょう。世の中には大量の情報があふれていますし、流行ってなんだろうと考えたり、親や友だちの顔色をうかがったりするのは大変だと思います。受験も大きなストレスを感じるタイミングです。「楽しめ」とか「夢に向かって頑張れ」などと言われるでしょうが、時には自分が今どういう状態かをみてください。ちょっと疲れたなとか、頑張りすぎているなと思った時には、休んだり好きなことをしたりしましょう。人を頼ることと自分をケアすることはとても大事です。

石川県立看護大学に関心を持ったあなたは

石川県立看護大学はこれからの看護職、看護研究者を育成するために、1.DXの推進2.国際的な視点での看護3.産学連携の推進4.防災や災害時の対応に関する教育・研究の充実の4点を、特に重要と考え強化を進めています。
本学は看護師・保健師のダブルライセンス受験資格を取得できる全国的にも数少ないカリキュラムを実施しているほか、学生一人当たりの教員数も北陸地区の看護系大学では最大級であり、なりたい自分をサポートする環境が整っています。ぜひ一緒に本学で学びましょう。