がんになっても自分らしい日常生活が送れるよう支援
がんになっても長生きできる時代
がんは、日本人の死因の第1位ですが、がん患者の10年生存率は6割近くまで向上しています。がんに罹患(りかん)しても長く生きられる時代になり、がん患者が治療しながら、また治療後も自分らしい日常生活を過ごせるよう、全人的な視点からの支援が求められています。
身体的な支援
日本人の女性でもっとも罹患率の高い乳がんでは、進行の程度によって、わきの下のリンパ節を取り除く手術を行うことがあります。
手術の傷は瘢痕(はんこん)化して治癒することで皮膚の伸縮が悪くなり、腕が上がりにくくなることがあります。また、リンパ郭清(かくせい)によりリンパの流れが悪くなりリンパ浮腫(ふしゅ)を起こすことがあります。
このため、肩関節の関節可動域制限予防やリンパ浮腫予防のためのリハビリテーション支援が大事になります。患者が自分自身のために継続して上肢の運動やリンパ浮腫予防に取り組めるようセルフケア支援を行います。
精神的・社会的な支援
医学の進歩で乳房全体の切除は減少しましたが、乳房温存手術でも患者のボディイメージに大きな影響をもたらします。ボディイメージとは、“自分の身体が心の目にどのようにみえるか”であり、人格の中核としてその人らしさをつくる重要なものです。
一方、ボディイメージは成長や環境からの様々な刺激で変化し、特に、その人の人格形成に影響力の大きい両親や配偶者などからのメッセージは重要な刺激になるといわれています。喪失や変化したものへのとらわれから、今ここにある身体が“自分”として受け入れられるよう周囲の人々と連携して支援することが大切です。
また、がんの治療は、複数の治療を組み合わせて行う集学的治療がとられることが多く、乳がんの場合も同様です。がんに罹患した衝撃に加え、長期にわたる治療から離職することがあります。人にとって仕事は、経済的な目的だけでなく自己実現の場でもあり、その人にとって意味ある仕事を継続できるよう支援することも重要です。
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先生情報 / 大学情報
大阪歯科大学 看護学部 看護学科 教授 雄西 智恵美 先生
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