再生を助ける生体材料でケイ素が活躍! その仕組みとは

再生を助ける生体材料でケイ素が活躍! その仕組みとは

体の成長に不可欠なケイ素

地球の地殻中に多く存在するケイ素は半導体の材料として知られていますが、哺乳類にとっては骨の成長などに欠かすことができない必須微量元素でもあります。骨の再生を助ける人工骨の材料にケイ素が主成分のガラスを用いると、溶け出したケイ素が体内のリンやカルシウムイオンと反応して、ほかの材料の人工骨よりも成長が早くなることが知られています。しかし体の中に存在するケイ素は非常に微量であり、その体内でのふるまいはよくわかっていません。

生体組織再生材料に最適な構造

ガラスの人工骨は骨の成長を促すとはいえ、硬くてもろいため大きな骨には使えません。ケイ素の4本の手をすべて酸素と結合させた構造はしなやかさに欠けます。しかし、ケイ素と結合している酸素を、炭素に置き換えれば柔軟性は増します。ガラスから溶出するケイ素はオルトケイ酸の形で、細胞を刺激すると考えられています。その一部を、いくつまでなら炭素に置き換えても細胞活性に効果があるのか、かつ体に悪影響がないのかがわかれば、柔軟性のある「生体組織再生材料」に利用できます。そこで、生体材料の抽出液を用いて、ケイ素を含む分解物の構造が明らかにされました。さらに、その抽出液を骨や神経などの培養細胞に与えたところ、成長促進に効果のあるケイ素の構造は細胞の種類によっても違うことがわかりました。

微量なケイ素の検出

細胞内でのケイ素の構造などについての基礎的な研究を行うためには、細胞内の微量なケイ素を検出する必要があります。酸素を炭素に置き換えたケイ素が、実際に細胞の中に取り込まれたかどうかを確認するのは容易ではありません。細胞の成長に影響があるケイ素濃度があまりにも低いため、検出が難しいのです。電子顕微鏡などを用いて直接細胞を観察することは有力ですが、微量であることが原因で、試料を作る段階で使用する試薬などの影響が大きく出てしまうといった問題があります。そのため、観察用の試料作製法が模索されています。

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九州工業大学 工学部 応用化学科 准教授 城崎 由紀 先生

九州工業大学 工学部 応用化学科 准教授 城崎 由紀 先生

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生体材料学

先生が目指すSDGs

メッセージ

工業大学や工学部というと機械や情報のイメージがあるかもしれませんが、身体の中に入れる材料を扱う生体材料学のように、医療分野の研究も可能です。私も工学部出身ですが、医学部の先生と一緒に研究し、動物実験も学びました。また、研究を円滑に進めていくためには、人の話を正しく理解し、自分の意見を正しく人に伝えることもとても重要です。数学や物理・化学・生物などを勉強しておくことも必要ですが、文章を正しく読み解く能力を磨くために、国語(母国語での思考)もしっかり勉強しておくことをおすすめします。

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