AIを使って放射線治療の効果を予測! 医学物理士の研究
放射線治療でがんの痛みをやわらげる
放射線治療は、がんのある部位に放射線を当てて、がん細胞のDNAを傷つけてダメージを与えます。骨に転移したがんにも効果的です。骨に転移すると痛みが強いことが多く、痛みをやわらげるために放射線治療を行うこともあります。当てる放射線量を高くすれば高い効果を期待できますが、骨折のリスクが高くなります。がんのまわりの正常な細胞も放射線によるダメージを受けるからです。
目には見えない画像の特徴を見つける
骨を守りながら骨のがんをやっつけるために、「ラジオミクス×AI」で放射線治療の影響を予測する研究が行われています。ラジオミクスとは、CT画像やMRI画像から、人間の目には見えない形やテクスチャー(質感)などの特徴をピックアップして、診断や治療に役立てる技術です。この研究では、ラジオミクスで得られた大量のデータを機械学習にかけて予測モデルをつくります。こうした予測の研究は以前からありましたが、ラジオミクスやAIを活用することで、より確かな予測ができるようになっています。患者ごとに治療の影響を予測できれば、放射線量の最適化や、骨折予防の薬の使用など、より安全で効果的に治療することが可能になります。
医学物理士は放射線治療のエキスパート
放射線治療を行うのは医師、診療放射線技師ですが、最近では「医学物理士」の存在感も増しています。
治療計画の作成は、まさに医学物理士の腕の見せどころです。目には見えない放射線がターゲットに確実に当たるように、どんな角度から、どのぐらいの量で、どんな機器・方法を使って当てるか、専用のソフトウエアを使ってシミュレーションしながら計画するという、ハイレベルなスキル・経験が求められる仕事です。医学だけでなく物理学、プログラミング、数学、機械工学などの知識ももつ医学物理士は、放射線量測定による安全管理や、治療機器のメンテナンスなど、エキスパートならではのさまざまな役割を果たしています。
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先生情報 / 大学情報
駒澤大学 医療健康科学部 診療放射線技術科学科 講師 中島 祐二朗 先生
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放射線医学、放射線治療、医学物理学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?