感染していないのに働く免疫の不思議 解くカギは?
感染していないのに免疫システムが作動する
細菌などの異物が体内に入ると、免疫が活性化し異物を退治します。しかし、細菌やウイルスに感染していないのに免疫が活性化することもあります。すると、自分の体内の細胞を攻撃して炎症を起こし、リウマチなどの自己免疫疾患を始め、糖尿病や動脈硬化など、さまざまな病気の原因になります。
免疫の異常には、遺伝子が関わっていることがわかっていますが、そのほか、ストレスなどの環境因子もあると考えられています。このような、まだよくわかっていない非感染状態での免疫活性メカニズムを、ショウジョウバエを使って解明しようという研究が行われています。
ショウジョウバエと人間は似たもの同士?
ショウジョウバエは歴史的に、遺伝子研究によく使われてきました。例えば、胚発生をコントロールする遺伝子がショウジョウバエを使った研究から発見され、それが人間にも存在することがわかりました。人間とショウジョウバエの遺伝子は70%ほど同じなので、人間の遺伝子研究のヒントにできるのです。
ショウジョウバエは、遺伝子改変をしたものも含め10万種類以上の変異体があり、さまざまなパターンの実験ができるメリットがあります。そして、ショウジョウバエを卵のときから消毒して、無菌状態にする技術が開発されました。これが、細菌に感染していないのに免疫が活性化する仕組みの解明に、大いに役立っています。
ピンセットでつまむと免疫が活性化した!
無菌ショウジョウバエでの研究から、幼虫をピンセットでつまむと自然免疫が活性化することがわかりました。ピンセットで幼虫を移動させたところ、たまたまその現象が見つかったのです。温度や飢餓状態というストレスでは活性化しないため、このような機械的な刺激、または、それによって発生した体内物質が、免疫システムに何らかの影響を与えていると考えられます。
この現象がどのような仕組みで起こっているのか、遺伝子レベルでの今後の解明が待たれます。
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金沢大学 医薬保健学域 薬学類 准教授 倉石 貴透 先生
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