インフルエンザのワクチン開発に求められる検索技術

インフルエンザのワクチン開発に求められる検索技術

将来流行するインフルエンザウイルスを予測する

次に流行しそうなインフルエンザのワクチンを、検索技術を利用して創ることができるようになるかもしれません。インフルエンザのワクチンが、ウイルスの型によって効いたり効かなかったりする話を聞いたことがあるでしょう。インフルエンザウイルスは毎年変異していて、今年効いたワクチンが来年のウイルスに効くかどうかはわかりません。ただ、ウイルスのアミノ酸配列の変異にはパターンがあるようで、そのパターンがわかれば将来のウイルスの配列を予測できます。
アミノ酸は20種類の記号で表せます。1968年以降は、インフルエンザウイルスのアミノ酸配列のデータが残っています。しかも、毎年生き残るウイルスは1種類であることがわかっているので、時期的に前後するウイルスの配列を比べて共通パターンを探っていけば、どの部分が変異したか明らかになります。

アミノ酸配列データからの共通パターンを探しだす

しかし、共通パターンを突き止めることは容易ではありません。同じ検索でも、あらかじめ検索語がわかっている場合は、頭から調べその言葉が出現した場所を明らかにすればよいのですが、この場合はまず共通となる検索語自体を探し出す必要があります。共通するパターンは通常「頻度」を検索の評価基準とすることで発見できます。しかしそれだけでは十分でなく、場所の情報を含まなければ使える情報にならないのです。それを見いだすアルゴリズム(手順)は簡単ではありません。
共通パターンが見いだされれば、あとは専門家によって実験・検証が行われ、生物学的な意味が解読されることになります。これまでに蓄積されているインフルエンザウイルスのアミノ酸配列データは、テキストデータに置き換えると数十メガバイトという巨大なものになります。このような大きなデータをそのまま扱うことはできません。また、毎年違うワクチンを開発することを考えると、効率的なワクチン開発は必須です。その意味で、検索技術の進歩は大変重要な意味を持っているのです。

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九州工業大学 情報工学部 知能情報工学科 教授 坂本 比呂志 先生

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ソフトウェアを作る面白さは、アイデアだけでコンピュータの進歩以上の能力を引き出せることです。コンピュータはハードウェアの進歩によって、10倍、100倍と高速になりますが、そのためには莫大な開発費や生産設備コストがかかります。しかし、ソフトウェアは、アイデアがあれば千倍、1万倍のスピードを得ることも可能です。インターネットをはじめとする情報の増大によって、高速な検索技術への需要などはますます高まっていきます。ぜひ、ソフトウェアづくりに挑戦してほしいですね。

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九州工業大学情報工学部は1986年に創設された日本初、現在も国立大学で唯一の情報工学部です。知能情報工学科、情報・通信工学科、知的システム工学科、物理情報工学科、生命化学情報工学科の5学科があり、それぞれの分野において、高度な専門技術を身につけた人材を養成します。これまでに1万人を超える情報通信技術者を生みだし、様々な分野で日本の情報通信革命を支えています。