分子と分子をくっつけることから、新しい産業が生まれる
有機合成化学の2つの流れ
有機合成化学とは、簡単にいえば分子と分子をくっつける方法を探す学問です。そして、何を行うかによって2つの流れがあります。1つは、新しい医薬品や農薬、電子材料などの完成品を作る流れです。もう1つは、新しい分子の作り方を探す流れです。実は、前者の完成品は後者の成果があって初めて可能になります。複雑かつ大規模化した現代の有機化合物は、数多くの化学反応の集積によるものです。これをゼロから作ることは不可能といっていいでしょう。そのため、化学者はいろいろな場面を想定して、新しい分子の作り方を常に探しているのです。
魅力は一人で開発ができること
「新しい分子の作り方」にはずっと日の目を見ないものがある一方で、作られて数十年後に時代を変える重要な材料や医薬品開発に不可欠な技術として注目され、ノーベル賞を受賞する例もあります。この研究の面白いところは、フラスコと知識があれば一人でできてしまうことです。新しい自動車、携帯電話などの開発は、大規模なプロジェクトを組む必要があり、多くの開発者が協力しなければ製品は生まれません。しかし有機化学は、研究者の知識、経験、さらには勘を駆使することで、世界で初めての材料を作り出すことができるのです。
有機合成化学の成果
有機合成化学が何を生み出すかは、時代によって変化してきました。昔は染料の色を開発していました。その後、抗生物質を作れるようになり、医薬品製造の分野に進出します。最近では、新しい電子材料の開発に不可欠な存在になっています。例えば、テレビや携帯電話の液晶パネル、有機EL製品、コンピュータに使用されるさまざまな電子材料は、この学問の成果がなければ誕生しませんでした。これは1990年代には予想できなかったことです。有機合成化学は新しい産業の創造にも貢献しているのです。
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先生情報 / 大学情報
九州工業大学 工学部 応用化学科 教授 岡内 辰夫 先生
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