無重力にいると人の体は? 宇宙飛行士の健康を守る「宇宙医学」
日々の筋トレが必須!
「宇宙医学」は、宇宙という特殊な環境下で起きる人間の体の変化を調べて、もし悪い変化が起こるなら、そのメカニズムを研究して予防法や治療法を見つける学問です。
地上と宇宙の違いの一つが重力の有無です。無重力の宇宙環境にいることで、体にさまざまな変化が起きることがわかっています。例えば、地上にいる私たちは常に重力に逆らい、筋肉や骨で体を支えていますが、宇宙ではその必要がないため筋肉や骨が弱くなります。筋力や骨量の低下を防ぐために、国際宇宙ステーション(ISS)にいる宇宙飛行士は専用の運動器具を使って筋トレや有酸素運動を行っています。
ISSに長期滞在すると
人体には、足のほうへ流れた血液を重力に逆らって心臓に戻す仕組みが備わっています。無重力の宇宙でもその仕組みが働くため、上半身に血液が集まります。その影響を調べるさまざまな研究が行われています。
NASA宇宙センターにおいて宇宙飛行士の脳の血流を飛行前後で調べた結果、短期滞在では変化しないものの、長期滞在後に血流が増えることがわかりました。そこで滞在中の変化を知るために、ISSで血流を測定する研究が進められています。また地上でも、ベッドの頭側を下げて血液を上半身に集めた状態で被験者のデータをとる実験が行われています。実際に宇宙飛行士のデータをとる機会は限られるため、宇宙医学の研究者はいろいろな工夫をして宇宙にいるときと同じような体の状態をつくり、シミュレーションを行っています。
宇宙飛行士は多様化の時代へ
これまでの研究や経験から対策・管理が進み、宇宙飛行士は宇宙で健康に過ごせるようになりました。脳血流の変化などは帰還後しばらく経つと元に戻るため、健康な宇宙飛行士にとって問題はないと考えられています。けれども今後は、宇宙開発や宇宙旅行の進歩とともに「宇宙飛行士」が多様化するはずです。年齢、人種、障害・持病の有無など多様な人が宇宙に行くことを前提に、宇宙医学のさらなる発展が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
日本大学 医学部 教授 岩﨑 賢一 先生
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