インターネット選挙運動と偽情報について考える
日本のインターネット選挙運動
2013年の公職選挙法改正により、日本における「インターネット選挙運動」が解禁されました。投票は認められていませんが、18才以上の有権者や候補者、政党は選挙期間中にWeb上で投票を呼びかけることが可能になりました。この解禁により投票率が上がる、あるいはお金をかけずに選挙を戦えるといった期待もありましたが、まだまだそうはなっていません。一方、従来はジャーナリストなどの限られた人しか触れられなかった政治家の声に誰もが直接触れられるようになったことは、法改正の成果の一つと言えます。
拡散する偽情報
2010年代半ばにSNS(ソーシャルメディア)が普及すると、インターネット選挙運動における「偽情報」の問題が表面化します。2016年の米国大統領選では、共和党のトランプ候補に有利になる偽情報が量産され、SNS上で拡散したことがトランプ政権誕生の一因であるとされています。同年に英国で行われたEU離脱を巡る国民投票においても、EU加盟によって生じるデメリットについての偽情報が拡散し、結果的に離脱が決定しました。いずれの事例とも、第三国からの偽情報拡散の可能性も指摘されています。
偽情報への対策
日本でも、首相が実際に話していない内容を話す偽動画がAIによって生成され、拡散するという事件が起こりました。偽情報への対策には規制を設けることが有効ですが、日本の対策は進んでいるとは言えません。規制は表現の自由を損なわない範囲でなければならず、その情報が事実に基づいたものかを調べる「ファクトチェック」をどの機関が担うのか、あるいは罰則の効力なども決める必要があります。
インターネットやSNSの普及、法制度の改正にともない、私たちと政治の関わり方は大きく変わりつつあります。インターネット時代での選挙運動のあり方を考えるためには、SNS上で流布する膨大な情報の解析や、選挙や各法改正に関わる人たちへの取材といった研究が不可欠なのです。
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