大きく変わる日本の旅行業界の未来を考える
日本の旅行会社
日本の近代的な旅行業は、1905年に日本旅行会(現日本旅行)が、高野山や伊勢神宮への参詣団向けに「団体旅行」というスタイルを初めて作ったことが原点です。高度経済成長期を迎えると、人々の余暇時間が増加し、また交通網が発達したことで国内旅行が盛り上がりました。その後は海外旅行の自由化や格安航空券の登場を受けて海外旅行も身近になるなど、旅行市場は拡大を続けます。こうした旅行を企画・運営する国内の旅行会社は、旅行や観光に関する「情報提供」と道中の「安全安心」、また企画や添乗といった「人的サービス」、さらに企業努力によって安価な旅行を提供する「経済性」という価値を提供することで成長してきました。
大きな変化の波
近年の旅行業界は大きな変化の波にさらされています。新型コロナウイルスまん延の打撃を受けただけでなく、「オンライン・トラベル・エージェント(OTA)」の台頭によって、新たな旅行サービスが多数生まれたのです。インターネットを窓口とする旅行販売が一般化して、例えば空き部屋や空き家を活用するマッチング型サービス「Airbnb」のほか、海外の大手OTAが続々と日本市場に参画しています。また、コロナ禍の収束後はインバウンドも回復し、2023年は2,507万人の外国人観光客が日本各地を訪れています。
業界の今後
環境が大きく変わり、日本の旅行会社は従来のビジネスモデルだけでは生き残れなくなっています。しかし、顧客との信頼関係や、宿泊施設・運輸機関との連携、地域との協力関係といった、これまで築いてきた強みがなくなるわけではありません。また会議や展示会といったビジネスと旅行が融合した「MICE」というイベント市場や、富士山をはじめとする観光資源の価値を最大化すべく、地域の交通会社間の連携を促進するなど、さらなる成長の芽はまだまだ残されています。高い企画力やホスピタリティを発揮して地域と観光客をつないできた日本の旅行業界は、まさに新しい局面を迎えているのです。
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先生情報 / 大学情報
日本大学 国際関係学部 国際総合政策学科 准教授 矢嶋 敏朗 先生
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