眠っている間に暴れてしまう「レム睡眠行動障害」はなぜ起こる?
「レム睡眠行動障害」ってどんな病気?
あなたは「睡眠障害」という言葉を聞いたことはありますか。睡眠障害とは睡眠時無呼吸症候群や過眠症をはじめとする睡眠に関連した病気のことで、現在約90種類ほどの病気が見つかっています。睡眠障害の1つに「レム睡眠行動障害」があります。これは睡眠時随伴症に属し、中高齢の男性に多いとされています。どのような病気かというと、通常レム睡眠時は、頭は動いていても体は動きません。しかし、「α-シヌクレイン」というタンパク質が神経に付着して、レム睡眠時の運動を抑制する神経機構が障害されると、レム睡眠時に通常動かないはずの体が動いてしまうのです。
将来、認知症やパーキンソン病になる恐れ
すると、例えば戦っている夢を見た時に近くにいる人を殴る、敵から逃げている夢を見た時に窓ガラスを割って逃げるなどをして、実際に怪我をしたり、させたりしてしまいます。また、この病気は、神経機構の障害が徐々に脳の皮質にまで広がし、将来的にレビー小体型認知症やパーキンソン病といった「αシヌクレイノパチー」に発展するケースが数多くあります。暴力的な行動はある程度、薬で抑えられますが、シヌクレイノパチーへの発展を食い止める方法は今のところ見つかっていません。そこで効果的な治療薬や治療法の発見につなげるために、病気の詳細を探る研究が行われています。
さらなる調査で病気の全体像に迫る
近年、一般の人々を対象にレム睡眠行動障害になる人にはどのような人が多いのか調査したところ、女性にも多く潜在することがわかってきました。αシヌクレイノパチーに発展していない人でも、嗅覚の低下や認知機能の低下といった、シヌクレイノパチー特有の症状が出ている人が一定数いて、その進行が速い人も遅い人もいることが確認されました。いろいろな特徴をもつレム睡眠行動障害の全体像をさらに明らかにし、今後、αシヌクレイノパチーへの発展リスクの高低を決める要因や、発展を食い止める方法についての研究が期待されます。
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帝京大学 医療技術学部 臨床検査学科 准教授 咲間 妙子 先生
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