有機化学と無機化学の境界

有機化学と無機化学の境界

身近にある化学

化学とは物質を構成している最小単位を「原子」や「分子」ととらえ、それを研究対象にする学問です。
人類のもたらした環境問題を解決したり、有用なナノテクノロジーを生み出したり、さらに未知の生命現象を解明していくには化学が不可欠です。なぜなら原子、分子を自在に組み替え、本質的な“ものづくり”ができるのは化学だけと言えるからです。
物理学では素粒子、生物学ではホルモンやたんぱく質などを扱いますが、これらは人間がコントロールすることはほとんどできません。しかし、化学で扱う原子や分子は、人間が直接操作できるのが面白いところです。
人類は、紀元前よりもずっと昔から、「物質とは何か?」を知りたいと願い、いろいろな発見をし、それとともに化学という学問が育ってきました。化学の魅力は、なんといっても、体験を通して物質世界を直接扱ったり、調べたりできることと言えるでしょう。

いま注目を集めている分野

化学と一口に言っても、有機化学、無機化学、物理化学などさまざまな分野がありますが、現代の化学は、分野の垣根を越えてもっと奥深く、ますます複雑化しています。
例えば、有機金属化学(金属と炭素の結合を持つ化合物の化学)。これは有機化学と無機化学のちょうど境界に位置していて、現在、化学の中でも目覚ましい発展を遂げている分野です。これは、ごく簡単に言うと、金属を有機化学で、有機物や生命を無機化学を使って研究し、新しい化学の世界を開こうというもの。例えば、合成するものの中に金属という“飛び道具”を入れてみることによって、今までくっつかなかったもの同士がくっついて、新しい合成ができることもあるのです。
有機金属化学の面白さは、重要なことを偶然発見すること。歴史を見てもこれまで見出された多くの大発見・大発明は“偶然”見つかったものが多く、化学分野でもまだまだこういった部分が多くあります。このような境界領域は、まさに開拓すべき未知の宝庫と言えそうです。

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先生情報 / 大学情報

東京農工大学 工学部 応用化学科 教授 平野 雅文 先生

東京農工大学 工学部 応用化学科 教授 平野 雅文 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

私たちの身の回りには、天然や人工の多種多様な物質が存在します。これらを化学の目で見れば「すべての物質は原子、分子から成り立っていて、結合の順序が異なるために性質の違うさまざまな物質がある」と言えます。今世紀にさらなる発展を遂げるためには、これらを原子・分子レベルで理解、制御、応用していく能力が必要です。未来を切り開くための「センター・オブ・サイエンス」として、最先端の化学技術がますます重要になっています。ぜひ私たちと一緒に、これまでにない新しい、かつ有用な化学の世界を開拓してみませんか。

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東京農工大学は、自由な発想に基づく教育研究を通し、社会や自然環境と調和した科学技術の進展に貢献し、それを担う人材を育成します。民間機関等と行う大型の共同研究数は全国の大学で第一位です。MORE SENSEを基本理念とし、果すべき役割の大きさ、重さの自覚の上で農学と工学との協働をさらに進展させ、本学の特色を生かした教育、研究、社会貢献、国際貢献を一層前進させるための努力を続けていきます。