分子が機械になる! 光応答性マイクロマシン

分子が機械になる! 光応答性マイクロマシン

極微サイズの機械

機械はギヤやモーターなど、さまざまな部品が組み合わさり、目的の動作を行います。今、このような動作を分子レベルで行う研究が進められています。
ある種の高分子に青い光を当てると、分子中の電子の配置状態が変わります。分子は安定した形になろうとして、縮むように形を変えます。次に緑の光を当てると、電子の配置が変わり、分子が元の形に戻ります。この性質を利用するのです。

形状と光の当て方でさまざまな動きを示す

この分子を、ある溶液と混ぜてゼリー状にし、有機溶媒中でいろいろな実験を行ってみましょう。まず、このゼリーを直径2ミリほどの細い棒にします。その棒に青い光を当てると、光が当たった場所の分子だけが縮み、棒は光の照射方向に曲がります。
次に、ゼリーをチューブ(筒)状にして、円周に青い光を当ててみるとチューブにくびれができます。青い光を移動すると、くびれも移動します。
また、ゼリーを薄い膜にして台に固定し、部分的に青い光を当てます。すると、その部分だけが収縮し、溶液を排出します。緑の光を当てると、溶液を吸収し、元に戻ります。
この材料は、材料自身に光を感じる機能、指令を出す機能、その指令を運動に変換する機能が組み込まれているのです。ゼリーを加工する技術の精度が上がれば、光だけで動くナノサイズの機械が実現可能になります。これを「光応答性マイクロマシン」と言います。

どのような分野に応用できるか

例えば、チューブに物体を入れ、光照射によって物体を移動させる新しい物体の搬送方法になります。薄い膜にしたものに弁を付ければ、光に反応するポンプができます。現在のポンプは部品の大きさをある程度小さくすると表面抵抗のため動かなくなります。その点、この材料ならば、桁違いに小さなポンプができるのです。「マイクロリアクター」という極小の反応容器用ポンプとして使えるのではないかと考えられています。
光応答性マイクロマシンは、医療やIT、環境、エネルギー産業など、さまざまな分野への利用が期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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東京農工大学 工学部 応用化学科 教授 渡辺 敏行 先生

東京農工大学 工学部 応用化学科 教授 渡辺 敏行 先生

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応用化学 有機材料化学 化学工学

メッセージ

受験のための科目はいろいろな分野に分かれていますが、世の中で実際に研究の対象となる現象や開発すべき商品は、それらが融合したものです。バイオテクノロジーを研究したい場合でも、生物だけでなく物理と化学をもっと勉強する必要があります。物理と化学がわかっていると、自分で作りたいものを考え、設計し、作ることができます。あなたが興味を持った有機材料化学は、「まだ世の中になく、必要とされているもの」とは何かを考えて、それを実際につくる学問です。そのためにも、物理や化学の原理原則を理解することは大前提なのです。

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東京農工大学は、自由な発想に基づく教育研究を通し、社会や自然環境と調和した科学技術の進展に貢献し、それを担う人材を育成します。民間機関等と行う大型の共同研究数は全国の大学で第一位です。MORE SENSEを基本理念とし、果すべき役割の大きさ、重さの自覚の上で農学と工学との協働をさらに進展させ、本学の特色を生かした教育、研究、社会貢献、国際貢献を一層前進させるための努力を続けていきます。