環境問題を解決する植物も作り出す「植物育種学」
「植物育種学」とは
農学の領域の一つに「植物育種学」という学問分野があります。これは植物の品種改良に必要な技術や原理を研究する学問です。この学問は、これまで作物の収量増加と品質向上に大きな役割を果たしてきました。
実際に開発され使われている育種技術としては、突然変異を人為的に誘導する「突然変異育種」、性質の異なる個体をかけ合わせる「交雑育種」、染色体を倍加させる「倍数性育種」、そして遺伝子組換えなどがあります。人口が急激に増加した1960年代は、交雑育種による品種改良によってイネなどの穀物生産量が倍増したことで深刻な食糧危機を免れることができました。これは「緑の革命」と呼ばれています。
不可能だったかけ合わせが可能に
交雑育種は、性質の異なる個体をかけ合わせて雑種を作り、その子孫の中から優良な個体を選び出して新品種とする技術です。しかし、遠縁の種の間でかけ合わせを行うと雑種が生育の途中で死んでしまう現象が起こることがあります。これを「雑種致死性」と言います。この現象が起こるのは、両親から受け継いだ遺伝子間の相互作用により、雑種の細胞が自ら死んでいくプログラムが発動されるからです。そこで、そのプログラムの発動に関わる遺伝子を突き止め、それを働かないようにするという最先端の研究が行われています。この研究は、遺伝子を網羅的に調べることができる「次世代シーケンサー」という装置を用いることで、格段に進展しました。
「グリーン・イノベーション」に果たす役割
今、植物育種学が大きな役割を果たすと期待されている分野が「グリーン・イノベーション」です。これは人口爆発や地球温暖化、そして自然破壊といった環境に関わるさまざまな問題を解決する技術を開発し、それをビジネスにまで展開して産業として盛り上げ、雇用も創出しようという動きです。
従来はバイオエタノールなどエネルギーの分野で活発な動きがありましたが、これからは植物育種学によって環境問題を解決する植物が新たに生み出されるのではと期待されています。
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先生情報 / 大学情報
東京農工大学 農学部 生物生産学科 教授 山田 哲也 先生
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先生への質問
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