百万分の1秒の世界! 生体高分子のダイナミクスを追う
生命現象を理解するためには
体の中で働くタンパク質や核酸などの生体高分子は、その機能を発揮するために刻々と構造を変化させています。生命現象を理解するには、その生体高分子のふるまいを知ることが非常に重要です。
タンパク質の溶液中での構造変化については、これまで百万単位のタンパク質分子の集まりの平均的な変化しか計測できませんでした。近年、顕微鏡やタンパク質につける蛍光色素と、光の検出器の性能向上によって、たった1つの分子の動きを計測できる「1分子計測法」が確立されました。
タンパク質1分子の動きを計測
1分子計測法では、顕微鏡の焦点を溶液中の1点に定めて、その観察領域に入ってきた1分子を計測します。タンパク質につけられた2つの蛍光色素はお互いの距離によって異なる強度の蛍光を発するため、開いた構造と閉じた構造では検出される信号に違いが生じます。これを精密に解析することで、タンパク質の構造がどのようなタイムスケールで変化しているのかがわかります。また蛍光の強度は色素間の距離と関係するので、タンパク質の構造もある程度知ることが可能です。
ただし、観察領域に1分子だけが入ってくるのを待つために時間がかかることや、1分子のみの信号は弱く時間分解能が落ちてしまうことが弱点です。これを克服するのが「蛍光相関分光法」です。通常の1分子計測法では観察領域に2分子以上入ってしまうと信号が混じって解析できませんが、蛍光相関分光法では、2~3分子が出す信号をうまく解析して1分子ごとの動きの情報を取り出します。1分子になるまで待たなくてよく、また信号も強くなるため時間分解能が高く、マイクロ秒単位での計測が可能です。
DNAや脂質も動く
構造が変化するのはタンパク質だけではありません。DNAは2本鎖から1本鎖に変化して、細胞膜などの脂質二分子膜を構成する脂質は横方向に動き回ることができます。これらのさまざまな生体高分子の動きを知ることをめざして、高精度な計測法の開発が進められています。
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