匂いでコミュニケーション! 化学物質を駆使する昆虫の世界

匂いでコミュニケーション! 化学物質を駆使する昆虫の世界

化学物質でコミュニケ―ション!?

人間は、視覚や聴覚を使ってコミュニケーションしていますが、実はほかの多くの生物は別の手段に頼っています。同種間に働く「フェロモン」、異種間に働く「アレロケミカル」、それらを合わせた「セミオケミカル」という情報化学物質が、生物間でのコミュニケーションツールとして広く使われているのです。自然界で起きていることを解き明かして、生物間のコミュニケーションを探れば、私たちの生活にも役立つような応用も可能になります。

アリは体の油成分の違いや割合で家族を見極める

例えば、アリはシロアリやミツバチ、スズメバチと並んで集団で家族を作って生活している昆虫です。しかも家族の結束が非常に強く、ちゃんと自分の家族を認識します。まったく同じ種類のアリでも違う家族とは暮らしません。どうやって家族を見極めているのでしょうか。そのカギは化学物質にあります。昆虫は種類ごとに体の表面を覆っている油の成分が違います。その主な成分の一つは炭化水素で、さまざまな種類の炭化水素成分の中から、種類ごとに異なる組み合わせを持っているのです。さらに家族内では持ち合わせた成分のブレンド比率をピタリと合わせることで、互いを家族だと識別しているのです。

アリの匂いを盗んで巣に居候する生き物たち

アリはいわばよそ者を嫌う昆虫なのですが、アリの巣の中に入り込んで居候している別の種類の生き物がいます。これを「蟻客(ぎきゃく)」といい、例えばアリツカコオロギやハネカクシ、シジミチョウの幼虫が該当します。かれらは、アリの匂いを盗んでまねて家族に化けているため、アリに襲われません。これを「化学擬態」と呼びます。蟻客がどのようにして匂いを獲得するのか、そもそもアリ自身が成虫になった時どのようにして家族の匂いを獲得するのか、いつ家族を識別できるようになるのか、そしてその家族の中でいつから一人前として認められるのか。これらの尽きることない謎を解き明かすための研究が今も進められています。

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京都工芸繊維大学 工芸科学部 応用生物学域 応用生物学課程 教授 秋野 順治 先生

京都工芸繊維大学 工芸科学部 応用生物学域 応用生物学課程 教授 秋野 順治 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

昆虫学、応用昆虫学、化学生態学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校の教科書は、化学も生物も基礎になることが書かれており、研究者の目から見てもよくできています。高校生の今はひたすら暗記で覚えることが多く、苦痛かもしれませんが、大学に入ってからやるのは「わかってないことを解き明かす」ことです。答えのないことに取り組むのが大学の研究です。そのためには、今までどんなことがわかっているのかという基礎知識が必要になります。ただ暗記するのではなく、その先に奥深い世界があることを意識して勉強を頑張ってください。

先生への質問

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京都工芸繊維大学に関心を持ったあなたは

歴史都市京都にあって、本学は、伝統文化や伝統産業との深い結びつきを背景に、工芸学と繊維学にかかわる幅広い分野で常に先端科学の学理を探求し、「人に優しい実学」 を志向する教育研究によって、広く産業界や社会に貢献してきました。さらに、本学は、長い歴史の中で培った学問的蓄積の上に、感性を重視した人間性の涵養、自然環境との共生、芸術的創造性との協働などを特に意識した「新しい実学」を開拓し、伝統と先端が織りなす文化を創出する「感性豊かな国際的工科大学」を目指します。