機能性ナノ・マイクロ空間をバイオセンサに応用して細菌検出!
新手法のバイオセンサで細菌検出
細菌による感染症の場合、治療のために菌の種類を確定しなければなりませんが、従来は菌を培養する方法が一般的でした。しかし、細菌の種類や状況によっては確定までに1~10日かかるため、迅速かつ高感度な検出法の開発が応用化学や分析化学に求められていました。そんな中、ポリマー(高分子化合物)に型取りして作った検出膜(細胞鋳型膜)を使い、対象とする細菌を数分で認識する新手法のバイオセンサが開発され、注目されています。
細菌の表面化学構造まで精巧に転写
この細胞鋳型膜は、プラスの電荷を持つ導電性ポリマー(ポリピロール)にマイナス電荷を持つ細菌をいったん取り込ませ、その後、電気化学的な処理を施して細菌をはき出させて作ります。ちょうどアボカドの種を抜いたあとにできる穴のようなイメージです。この穴をナノ・マイクロレベルで見ていくと、細菌の表面化学構造も精巧に転写されていることがわかります。さらにこの膜と誘電泳動法という電気化学的な手法を組み合わせることで、鋳型を取った種類の細菌のみを認識することが可能になったのです。
例えば、腸管出血性大腸菌は細胞表面の抗原構造の違いでO157、O26などのタイプに分かれますが、これらのタイプも見分けられます。穴の大きさではなく、表面化学構造が鍵となって鋳型とその対象となる細菌が選択的に結合するという仕組みなのです。
異分野が融合して広がる研究
この検出手法は、これからの食の安全や医療に大きく貢献します。たとえ細菌に感染しても迅速に適切な抗生剤を確定できるため、患者が重篤化するのを食い止めることもできます。
また、この検出膜は、DNAやタンパク質、がん細胞などにも適用することができ、化学だけでなく生物学や物理学などと融合した研究を進めることで応用の範囲が広がる可能性もあります。近い将来には、家庭用血圧計や血糖値測定器のように簡単な操作でさまざまな健康管理ができるデバイスが登場することも期待されています。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 工学部 応用化学科 准教授 床波 志保 先生
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