触媒の役割について

触媒の役割について

意外? 身近に使われている触媒

「触媒」と聞いて何を連想しますか? 「化学反応を促進するもの」というように学校では習いますが、触媒は、プラスチック、医薬品など、私たちの身の回りの工業製品を作るときには欠かせないものです。
役に立つ物質を少量つくりたいときには、効率を考える必要はないでしょう。しかし、その物質を工業的に効率よく(資源を無駄にせず、環境を汚すことなく)生産するためには触媒が必要になります。工業的に行われるほとんどの化学反応で触媒が使われています。
1909年、ドイツのハーバーとボッシュがアンモニアを作る触媒を見つけ、人類を食糧危機から救いました。彼らは数千種類の触媒候補を片っ端から試したそうです。しかし環境問題の解決が重要になり、新触媒の開発にスピードが求められるようになっています。そのためには、触媒活性を司っている本当の力を知る必要があります。

エネルギー・環境問題を解決する

あらゆる工業の中で、ガソリンを作る、ということはもっとも大きな事業かもしれません。ここにも触媒が使われています。原油の成分は、ガソリン、灯油、軽油、重油、プロパンガスなどに分けられます。その中でいちばん需要が大きいのはガソリンです。重油は逆に余ります。仮に石油を掘ってきて、ガソリン部分を取り出し、重油を捨てたり燃やしたりしたら、すぐに原油が枯渇し、環境を汚してしまいます。そこで70年も前から、軽油・重油成分のクラッキング(分解)反応によってガソリン成分を増やすことが行われ、触媒の改良も間断なく行われてきました。この反応にはいまではゼオライトという優れた触媒が使われますが、その作用はとても巧妙です。このように触媒によって「必要なものを作る」例を挙げましたが、自動車の排気ガス中の有害成分を分解するなど「有害なものを消し去る」触媒もあります。このように触媒は環境問題の解決に貢献しているのです。

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先生情報 / 大学情報

鳥取大学 工学部 化学バイオ系学科 教授 片田 直伸 先生

鳥取大学 工学部 化学バイオ系学科 教授 片田 直伸 先生

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メッセージ

私は、プラスチックや医薬品、燃料などを効率的に(資源を無駄にせず、環境を汚さず)作る固体触媒の研究をしています。例えばゼオライトという触媒では、原子数個の並び方を変えるだけで、原油からガソリンを製造する能力が現れます。いわば、触媒はウルトラナノテクノロジーによってエネルギー、環境問題を解決し、社会を支える縁の下の力もち。このような原理を明らかにし、効率よく次世代の触媒を設計するため、縁の下の、そのまた下の力もちのような研究を行っています。

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鳥取大学は、教育研究の理念に「知と実践の融合」を掲げ、高等教育の中核としての大学の役割である、人格形成、能力開発、知識の伝授、知的生産活動、文明・文化の継承と発展等に関する学問を教育・研究し、知識のみに偏重することなく、実践できる能力をつけるように努力しています。また、研究・教育拠点、幅広い専門的職業人の養成、地域の生涯学習機会の拠点、社会貢献機能など個性輝く大学を目ざし、地方大学にこそ求められるオンリーワンの研究開発を行い、社会に貢献し、国際的競争力を確保できる大学運営を目ざしています。