バイオエタノールで、ディーゼルエンジンを始動せよ!
エネルギー問題で注目されるバイオエタノール
エネルギー問題、中でも石油資源の枯渇は石油エネルギーへの依存が大きい人類にとって重大な問題です。採掘可能な石油は、今までと同じペースで使用すれば、あと40年余りで枯渇するという説もあるほどです。
そこで注目されるのが、植物から製造されるバイオエタノールです。発酵技術を使うため、精製にほかのエネルギーの使用はありません。また、燃焼によって発生したCO₂と水は植物に循環させるため、理想的なリサイクルが実現します。
熱効率が高く、汎用性があるディーゼルエンジン
石油の利用で多いのは車や船のエンジンです。流通では、世界の輸送手段の約6割は陸運で、海運が3割です。ほとんどで、ディーゼルエンジンが使用されています。このディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて熱エネルギー効率が高く、パワーがあるためトラックや大型船舶にも対応できます。ところが、圧縮した空気の中に燃料を噴射して自然着火させるという仕組みのために、燃料はそれに適した軽油・重油しか利用できません。バイオエタノールは自然着火せず、ディーゼルエンジンでは使用できないのです。
燃料を選ばないエンジンを開発するために
そこで、バイオエタノールをディーゼルエンジンで利用するための研究を実施しています。問題はエタノールの性質上着火に適性な濃度と温度の同時達成が困難であることです。技術的には、圧縮比(ピストンが最も上昇した時のシリンダー容積とピストンが最も下降した時のシリンダー容積の比率)を高めたりシリンダー内に前サイクルで燃焼した高温のガスを入れたりすることで自然着火には成功しています。ただ、実用化にはまだ多くの課題があります。
この研究は単にバイオエタノールだけをターゲットにしたものではありません。エタノールは自然着火が特に難しい燃料なので、これが成功すればどんな燃料であってもエンジンは動くようになるでしょう。そのためのメカニズムを明らかにしようという研究なのです。
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