二酸化炭素排出量を増やさない、環境に優しいバイオマスプラスチック
石油は優秀な原料だけど欠点もある
石油はプラスチックの原料になり、現代の私たちの生活で広く使われています。石油はナフサという段階を経て、6つの基幹物質になり、そこからポリエチレンや塩化ビニルといった化学製品になります。これらは利用範囲の広い便利な材料ですが、最終的には二酸化炭素を排出するので、環境負荷が高いことが問題となっています。
バイオマスプラスチック
そこで、生物を利用してエネルギーやプラスチックを作る研究が進められています。例えば、でんぷんや砂糖を乳酸菌に食べさせて作った乳酸を化学的に合成してつなげ、「ポリ乳酸」というプラスチックにする技術です。これは現在いろいろな場面で使われ始めています。生活雑貨やボディタオルなどにも使われているので、あなたも目にしたことがあるかもしれません。また、多くのバクテリアは、ある条件の下で育てると、体の中に「ポリヒドロキシアルカン酸」というプラスチックをため込む性質があり、現在、研究が進められています。こうしたプラスチックは特に「バイオマスプラスチック」と呼ばれます。
バイオマスプラスチックのこれから
こうしたバイオマスプラスチックは、もともとの原料である植物が二酸化炭素と水でできているので、燃焼や分解で二酸化炭素と水に戻っても環境に負荷をかけません。このように二酸化炭素が形を変えながらぐるぐると回っている仕組みを「カーボンニュートラル」と言います。バクテリアにはいろいろな種類がいて、石油そのものをため込むバクテリアも研究されています。さらにこれから新しいバクテリアが見つかるかもしれませんし、遺伝子組換え技術でもっといいバクテリアを作る研究もされています。もともとバイオマスプラスチックには、加工のしにくさや、物性が劣るという課題がありましたが、幅広い研究が進められておかげで、徐々に克服されつつあります。さまざまな種類の石油由来のプラスチックがバイオマスプラスチックに置き換わっていくことが期待されています。
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