意外と身近な「放射線」の話

意外と身近な「放射線」の話

今もあなたの周りを飛んでいる

放射線は、放射性物質(放射線を出すもの)から出た、目に見えない粒子線や電磁波のことで、α(アルファ)線、中性子線、宇宙線、X線、γ(ガンマ)線などがあります。宇宙から飛んでくる宇宙線は今もあなたに降りそそいでいます。地面や大気中、雨などには太古からカリウム40、ウラン、トリウムなどの放射性物質が含まれ、“自然放射線”を発生し続けています。当然、大地で育った野菜や草、それを食べた動物の肉や乳、海の魚などにも放射性物質は含まれます。そして、それらを口にしている私たち自身も放射線を出しています。

幅広く利用されている人工放射線

自然放射線に対して、原子炉や機械でつくりだすものを“人工放射線”と言い、医療や工業、農業、食品など幅広い分野で利用されています。医療分野では器具の滅菌、がん治療、X線検査(レントゲン)などに人工放射線が使われます。X線は身体の柔らかい部分(筋肉、脂肪)は突き抜けますが、硬い部分(骨)は突き抜けることができません。この性質を利用して行うのがX線検査です。身体にX線を照射すると、写真では空気のある肺は真っ黒、筋肉や内臓は黒っぽく、逆に骨は白く写ります。

放射線の“プロフェッショナル”

放射線と聞くと“被ばく”を心配するかもしれませんが、私たちは普段から自然放射線を浴びています。地域などにもよりますが、その量は世界平均で年間2.4mSv(ミリシーベルト)です。人工放射線による医師や看護師などの職業被ばくは5年間の平均で1年あたり20mSv以内、職業以外の公衆被ばくは1年あたり1mSv以内と法律により制限が設けられています。しかし患者や被検者が受ける医療被ばくには、制限がありません。これは治療や検査に必要な放射線の量が病気の種類、症状や体格など人によって違うからです。きちんとコントロールするのは医師や診療放射線技師の役目です。特に診療放射線技師は、放射線を安全かつ安心して利用するための重要な責任を持つ、放射線のプロフェッショナルだと言えます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都医療科学大学 医療科学部 放射線技術学科 准教授 遠山 景子 先生

京都医療科学大学 医療科学部 放射線技術学科 准教授 遠山 景子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

放射線技術学

先生が目指すSDGs

メッセージ

放射線は体に影響を与えるため、放射線の障害を防止し、安全性を確保するようさまざまな法律で規制されています。診療放射線技師は法律を守り、体に影響を与えないよう管理しています。
意外かもしれませんが、診療放射線技師はX線を出す部屋の外側で操作するため、患者のそばにいる医師や看護師より被ばくが少ないと言われています。
この分野をめざすなら、人体の仕組みや放射線が身体に与える影響について興味を持つことが大事です。1年生では電気工学、物理、生物、解剖学などから学びます。好奇心を持って勉強してほしいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

京都医療科学大学に関心を持ったあなたは

診療放射線技師養成機関として日本最古の歴史を持つ本学は、「医療用X線装置」のパイオニアである株式会社島津製作所が、医学界の要望に応えてわが国初のレントゲン技術講習所を開設したのに始まります。開学以来、全国で活躍する診療放射線技師たちによる卒業生ネットワークを生かした支援により、毎年高い就職率を誇ります。高度な技術と知識に加え、チーム医療の現場で求められる豊かな人間性を養い、バランスのとれた診療放射線技師を育成します。