高齢者の転倒予防に効果あり 俊敏な動きを身につける「棒体操」

高齢者の転倒予防に効果あり 俊敏な動きを身につける「棒体操」

一度の転倒で寝たきりになる高齢者も

高齢者にとって転倒は、非常に大きなリスクをはらんでいます。高齢者の場合、日常生活でも転倒しやすく、しかも若い世代と異なり、転倒すると骨折したり、そのまま寝たきりの生活になったりする危険性もあります。たった一度の転倒で介護を要する生活になってしまうこともあるのです。また、たとえけがをしなくても、「今度転んだら大きなけがをしてしまうかも」という不安から、出歩かなくなる人も多くいます。

新聞紙とテープがあればできる棒体操

高齢者の転倒予防を目的に考案された体操が「棒体操」です。棒体操に使う棒は、新聞が1部あればできます。新聞紙を1部まとめて丸めて筒状にし、両端と真ん中に違う色のテープを貼って目印にします。そして、棒体操はその棒をバトンのように上に投げて、指定された色のテープをつかむだけです。
従来の高齢者向けエクササイズはストレッチやウォーキングなど、比較的ゆっくりした動きがメインでしたが、棒体操には俊敏な動きと判断が求められます。最初のうちは上手にキャッチできないかもしれませんが、失敗しても俊敏な動きをすることに意味があります。転ぶ瞬間は体のバランスが崩れるため、反射的な対応が求められるからです。ほかのエクササイズではできない、瞬時の対応力を磨くことが棒体操の目的です。

1回20分の棒体操を週2回

棒体操はお金も特別な器具も不要で、すぐに実行できる点が強みです。慣れてきたら、棒を投げた後に1回手をたたいてからキャッチするなど、難易度にも変化を持たせられます。ストレッチのみを続けている高齢者と比較して、棒体操を取り入れている高齢者の方が、転倒回数が減ることがわかっています。1回20分の棒体操を週2回実行するだけで、一定の効果が期待できるのです。簡単な運動なので、無理なく楽しみながら長く続けられることもメリットです。簡単に実行できる棒体操は、転倒予防の優れたエクササイズといえるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授 横井 賀津志 先生

大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授 横井 賀津志 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

作業療法学

メッセージ

リハビリテーションの分野の研究は、地域の高齢者とじかに接するフィールドワークが不可欠です。今は身内以外の高齢者と接する機会は少ないかもしれませんが、地域の清掃ボランティアなどに参加してみるといろいろな世代の人と交流できます。また、公民館などに行けば高齢者のさまざまなサークル活動に出会えるでしょう。
若い世代とのコミュニケーションを楽しみにしている高齢者は数多くいます。生の声を聴き、困り事や挑戦したい事を探ってみてください。きっと喜ばれるでしょうし、新たな発見があるはずです。

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2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。