がん患者と医療の未来を救う~放射線治療と画像解析技術の発展~
医療技術を発展させた放射線
放射線は体を通過したり体の中の物質を電離するという性質を利用して、医療に役立てられています。画像診断では、X線を使ったレントゲン撮影やCTスキャンという技術が開発されてきました。また、放射線は発見されてまもなくより、がん治療に使用されています。現在の放射線照射技術と画像診断技術の進歩は、高い精度でがんに放射線を集中して照射することを可能としました。これにより放射線治療は、切らずに治すがん治療法として、手術や薬物療法と並んでがん治療3本柱のひとつとなっています。
QOLを守る放射線治療
放射線治療の大きなメリットは、臓器の機能や形態を温存しながらがんを治療できる点です。例えば声帯がんの手術で声帯を除去すると、患者さんはその後、発声器なしには話すことができません。また、がんに対する治療のために、臓器の大きな範囲を切除すると、美容的な面で変化がおきたり、日常生活に困難を生じる可能性もあります。現在では、こうしたケースにおいてまず放射線治療が行われることが増え、がん治療を終えた患者さんが治療前の生活を取り戻せることが多くなりました。このように、治療だけでなく、その後のQOL(生活の質)を守ることが現代のがん治療における重要な目標になっています。
画像解析技術の発展がカギ
治療技術の開発とともに、がん治療の分野で注目されているのがプレシジョンメディシン(精密医療)です。治療前の検査により、効果を正確に予測してから治療法を選択するなど、精緻(せいち)な分析・判断に基づいた診療を行うことで、治療成績を向上させ患者さんへの負担や医療費を減らそうという取り組みです。画像診断は体への負担がなく、多くの情報を与えてくれる検査法です。がんの治療前には必ず施行され、進行度の診断などに使用されています。画像解析技術がさらに進歩し、取得した画像データからより多くの情報を取得し、治療効果を正確に予測できるようになれば、プレシジョンメディシンを推進することができるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 医学部 保健学科 放射線技術科学専攻 教授 生島 仁史 先生
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