齷齪する周囲を横目にひとり眠る快楽。 漢詩の世界に飛びこむ方法。
朝寝の気持ちよさを味わおう
国語の教科書で習う「春眠暁を覚えず」という漢詩は、つい寝過ごしてしまうほど心地の良い、春の朝について詠まれた作品です。この作品が書かれた唐の時代の中国では、位の高い人は朝早くから役所に勤めることが一般的でした。しかし、この詩の作者である孟浩然は官吏になれなかったため、位の高い人たちがせっせと出勤してゆく朝にも、悠々と眠ることができました。このように、作品そのものからは読み取れない当時の社会背景を知れば、孟浩然が感じた朝寝の眠りの心地よさが、千年以上後の時代を生きる私たちにも、よりリアルに感じ取れるようになります。
楽器を奏でて「詩の世界」を知る
孟浩然と同じ唐代の詩人である白楽天は、「聴覚的」な詩人と言われ、言葉がもつ音やリズムを巧みに取り入れた作風で知られています。代表作である「琵琶行」では、琵琶(びわ)という楽器がもつ魅力的な音色を、言葉で巧みに表現しています。詩に書かれた文字を丹念に読み込むことはもちろんですが、当時の様式の琵琶を実際に演奏して、その音色を直接に体感したうえで「琵琶行」を読むことで、白楽天が作品に込めた意図がより深く理解できます。ほかにも、書や絵画、お香など、漢詩に登場する中国文化に触れることで、漢詩の世界に入り込み、千年以上前に活躍した作者との対話ができます。
漢文学を研究するということ
漢詩を含む「漢文学(中国古典文学)」は、時間的にも距離的にも遠く離れた文化のように思えるかもしれません。しかし、漢詩が学校の教科書で扱われることからもわかるように、日本の文学・文化のルーツをたどれば「漢文学」に行きあたります。今から千年、二千年前に、私たちの直接の先祖である日本や中国、朝鮮といった東アジアの人たちはそれぞれの人生を歩み、思いを詩や文学という形で残してきました。一つ一つの作品を時代背景や文化を踏まえて考えることは、日本の文化の成り立ちを知ること、さらにはこの先、我々が進んでゆくべき道筋を考えるのにも直接につながるのです。
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