水の力を解き明かし、水の災害から社会基盤や人命を守る
津波から人々を守る
海に囲まれて地震の多い日本では、津波によって甚大な被害が度々発生しています。そのため、地震が起きた場合、どこでどのくらいの高さの津波が発生して、いつ到達するのかをできるだけ正確に予測することが、人命や社会基盤を守る上で非常に重要です。そこで、流体力学をベースとして津波の動きをモデル化し、複雑な海底地形や海岸線の形状などを考慮しながら、現地調査や実験によるデータを使って予測精度を上げる努力が続けられています。その成果は、ハザードマップの作成や防災計画の立案、避難経路の設定などに役立てられています。
水難事故を発生させる離岸流
毎夏、水難事故のニュースが報じられます。海水浴をしていて沖に流されてしまう事故の主な原因は、離岸流と呼ばれる海水の流れです。海の水面では、波は沖から海岸に向かってきますが、水中では局所的に沖向きに流れる場所があります。この流れが離岸流です。離岸流は、波のあるところでは必ず発生します。波が大きいと離岸流も強くなり、人間ではその力に逆らえずに沖に流されてしまいます。また、天候の変化で波の条件は絶えず変化するので、同じ海岸でも離岸流の発生場所は絶えず変化します。水面の波の動きと水中の流れが違うので、一般の人には特定することがとても難しいのが特徴です。
離岸流の実態を解明するために、着色した水を海に流してドローンで上空から撮影してデータを集め、シミュレーションによって離岸流が発生しやすい条件や場所を解析する研究が進められています。
自然の脅威に立ち向かう
水工学は、自然界のダイナミックな水の動きを解き明かし、制御して社会基盤に役立てるための学問です。水は私たちの生活に欠かせないものである一方で、時として猛威を振るい人間社会に多大な被害をもたらします。それを防ぐためには、物理学や地球科学など、さまざまな分野の知識を総動員する学際的なアプローチが不可欠です。自然の驚異に対して、人間の英知を結集して立ち向かっているのです。
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