アジアの気候変動を探る
意外に乏しいアジアの気候データ
気候変動には自然そのものの変動による変化と都市化や地球温暖化などの人間活動の影響による変化という2つの要因があり、その研究には長期間にわたる気候データが必要です。ところが、緻密な気候データがインターネットですぐに見られるような国は日本のような先進国に限られ、発展途上にある多くのアジアの国々では、研究に必要なデータがなかなか手に入らないのが現状です。
気候データを発掘する
例えば雨量は雨量計で測り、日本のアメダスなどの観測システムでは自動的に10分単位での雨量がコンピュータに記録・転送され、インターネットですぐに見られるようになっています。しかし、アジアの多くの発展途上国では、観測の頻度も1日1回、観測者が目で測って記録を紙に書き溜め、コンピュータに入力するのは1カ月に1度というような観測点が今だに多いのです。つまり、データとして使えるまでに早くても1カ月かかるのです。このように、データを集めるシステムが整っていないこともあって、今どこでどういうことが起こっているのかという現況把握さえも十分になされていない場所もあるのが現状です。現況を知るのさえこのような状態ですので、過去を知るのはさらに大変です。各地の気象台を訪ねたり、植民地だった国の場合は当時の宗主国の図書館などに行ったりして資料を探し出し、それをコンピュータに入力してデジタルデータ化して研究を進めます。また現地に気象観測機器を設置したりもしています。
過去と現在を知り将来に生かす
このようにしてデータを集め、気候がどのように成り立ち、今までどう変化してきてこれからどう変化していくのか、そしてその変化にはどのような要因が影響しているのかを探る研究が、アジアの国々との国際共同研究で進んでいます。将来の気候変動を知るためにも、過去の気候データを発掘することや現在の気象観測を進めることが不可欠なのです。こうした地道な研究を積み重ねた上で、変化する気候に対応する社会の姿が検討されるようになるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 地理環境学科 教授 松本 淳 先生
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