捨てないで! 農業生産の基盤を支える環境にやさしい資材開発
砕石副産物の有効利用
コンクリートの材料となる石や砂について、かつて日本では川や海の砂や砂利を採掘していました。しかし、氾濫の危険や海の生態系への配慮から、現在では採石場で採った岩石から砂と石を作っています。その岩石を砂や石に砕く過程で副産物として生じる粉体などは、これまで廃棄されてきました。
実は、土木資源としての石や砂は世界中で枯渇しつつあり、海外では不法採掘する犯罪集団が暗躍するほどなのです。そこでこの砕石副産物を、農業水利施設などの土木資材に有効利用する研究が行われています。
土木資材を副産物から作る
ため池は農業用水を確保するための水利施設ですが、その中の水を通さない壁の部分(遮水ゾーン)に使われる粘土質の資材が近年不足しています。砕石過程では砕石粉と呼ばれる粉体と砕石脱水ケーキと呼ばれる粘土質の副産物ができるため、これらをうまく配合して遮水ゾーンに適した材料の開発が進められています。研究では強度試験や、ため池の模型を作って地震波を与える実験、有害ではないかを調べる化学分析などが行われています。すでに農業水利施設の基準を満たす材料が出来上がっており、社会実装して全国に普及させることが目標とされています。
また、砕石副産物の新しい用途も模索されており、吸着剤や食品加工の資材への応用が検討されています。
材料の寿命を延ばして資源を守る
他方で、農業水利施設の寿命を延ばすことも資源を守ることにつながります。そこで取り組まれているのがひび割れにくいコンクリートの開発です。コンクリートの基本的な材料は石・砂・水・セメントと少量の薬剤ですが、ここにポリプロピレン短繊維という化学繊維を配合してひび割れへの抵抗性を高めます。過酷な環境下において寿命を調べる促進試験では、通常のコンクリートが6日でひび割れたのに対して、化学繊維を配合したコンクリートは1年たってもひび割れませんでした。この新しい配合のコンクリートを使って実際に水路を作り、そこでの調査が続けられています。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 農学部 食料環境システム学科 助教 鈴木 麻里子 先生
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先生への質問
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