ストレスを化学的に理解して老化や病気を予防しよう
酸化ストレスと抗酸化
体内では、呼吸や生体防御などの生命活動にともなって活性酸素やフリーラジカルが生成されます。酸化ストレスとは、老化や病気の原因となる反応性の高い物質(活性酸素や酸化物など)が過剰に生成して生理機能のバランスが崩れ、体に負荷がかかっている状態です。抗酸化とは、脂質過酸化を抑制するための機能で、水分を除くと約6割が脂質のヒトの脳では特に重要です。体内では複数の抗酸化酵素などが連携して酸化物を無毒化し、老化を防ぎます。
酸化・還元(レドックス)反応とストレスマーカー
活性酸素やフリーラジカルは反応性が高いので寿命が短く、生体のように水や油が多い条件で直接検出することは困難です。そこで、比較的安定な分子構造のアミノ酸や脂質などの酸化反応を研究しながら、抗酸化機能との関連性を解析します。「酸化と抗酸化」を同時に考察することは、レドックス反応に関与するストレスマーカーの探索にもつながります。ただし、ストレスマーカーは数多く存在するので、化学的な基礎研究に加え医工学連携を重視した異分野融合の研究も必要です。
サプリメントの効能を調べる
予防医学が注目されています。食生活や運動とのバランスが大事ですが、食事で足りないものはサプリメントで補います。酸化ストレスが生じたとき、サプリメントに含まれる抗酸化成分を「必要な場」に「必要な量」を適切に届けることが体内環境の正常化につながります。サプリメントの種類は豊富で、抗酸化成分の分子構造や分子量などによって体内で吸収・代謝されるメカニズムは異なります。ですから、毎日飲み続けることで効果があらわれる成分や、即効性があるものなどさまざまです。老化や病気の予防にはサプリメントの効能を正しく理解することが大切です。これまでの研究では、小動物の腎臓や肝臓などのレドックス状態をリアルタイムでモニターすることで抗酸化成分の新たな効能(即効性)を発表しました。
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