地球を救う「触媒」を探せ~CO₂をメタンに変える~
二酸化炭素からメタンを作る
人間は石油からエネルギーだけでなくプラスチックなどの「もの」を作り出してきたので、化石燃料が枯渇した場合に、太陽や風力から電気エネルギーだけを取り出しただけでは生活が維持できません。そこで、二酸化炭素(CO₂)からメタン(CH₄)を作り出すなど、炭素原子「C」を媒介にした「マテリアル循環」技術の開発が研究課題となっています。特に二酸化炭素は地球温暖化を促進するとして問題になっているので、人間にとって有益な別の物質に変換、加工し削減できる道が開かれたら、「一石何鳥」もの技術となるでしょう。
簡単にはいかない夢の技術
同じ炭素原子「C」が含まれてはいますが、変換は簡単な技術ではありません。化学実験では可能なのですが、工業レベルでの実用化を考えるなら、見合うコストで大量生産する必要があります。変換は、酸化金属などの「触媒」に水と光を当てながら二酸化炭素を触れさせて化学変化を起こさせます。しかし、大気中の二酸化炭素の濃度は380~390ppmとわずかですから、反応を行わせるには二酸化炭素の濃度を高めなくてはなりません。そして変換したメタンも吸着して集める必要があります。
触媒が反応の鍵を握っている
大量の変換には、反応効率がよく、寿命が長い触媒を探すことが最大の課題となっています。反応は触媒の金属の表面で起こります。二酸化炭素分子のうち半分をメタンに変えることができる効率のよい触媒があったとしても、反応によって表面がすぐに触媒の働きをしなくなるようなものだと触媒としては役に立ちません。そういう場合には、その触媒の表面でどんな化学変化が起こっているのかを分析し、触媒効果を妨げる化学変化を起こりにくくする方法などを探ります。また、紫外線か可視光線かなどの当てる光の種類によっても反応効率が変わってきます。こうしたさまざまな条件を組み合わせながら、世界中の研究者が触媒探しに取り組んでいるのです。
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