健康推進に不可欠な、「眠りの質」を解き明かせ!
健康に影響を及ぼす「睡眠負債」
頭がボーッとする、やる気が出ない、気分が優れないといった体調不良の症状は、睡眠不足も要因の一つになっていることがわかっています。特に、長期にわたる睡眠不足が蓄積する「睡眠負債」は、肉体的にも精神的にも、重大な病気を引き起こすと考えられるようになってきました。睡眠負債を返済するには、現状では、十分な睡眠をとる以外に方法はないと考えられています。
睡眠の質を測定する
睡眠負債を返済するのにどのくらいの期間がかかるかを調べた実験では、実験開始直後の数日間は1日12時間以上も寝ていた人が、2~3週間後には約8時間になった、と報告されています。多くの人にとって最適な睡眠時間は8時間であること、睡眠負債を返済するのには2~3週間も必要であることがわかります。
睡眠時間は十分足りているはずなのに、朝、起きたときにスッキリしないと感じる場合、睡眠の質が悪かったと考えられます。
自分に最適な睡眠を知るには、時間だけでなく睡眠の質を測定することが重要なのです。睡眠の質をあらわす睡眠の深さは脳波を測定することで判明します。就寝時に頭に脳波電極を装着するという方法では、気になって眠りが浅くなってしまうため、ベッドにセンサを取り付けるなど、より簡便に情報を収集するための機器が開発されています。また、収集した情報から健康状態を評価するためのビッグデータ解析も始まっています。
めざすのは健康を数値化すること!
高齢化にともなう医療費の増大が懸念される現代社会において、私たちに求められるのは、病気にならないように生活することです。睡眠が健康に大きく影響することがわかっているのですから、健康をより多くの人が実現・維持できるようにするために、睡眠にもう一度向き合う必要があるでしょう。睡眠の研究では、睡眠の質を測定して得られたデータを予防や診断、治療などに活用しながら、健康を数値化していくことが今後の大きな目標です。
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東北工業大学 工学部 電気電子工学科 教授 辛島 彰洋 先生
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