作業療法の中での音楽療法の役割とは?
精神疾患に有効な音楽療法
ひとくちにリハビリテーションと言っても、身体機能を高めることで生活を支援する「理学療法」と、さまざまな作業や活動を通して心身の機能回復を図る「作業療法」があります。つまりリハビリテーションには身体だけでなく「心の機能回復」も含まれるのです。その作業療法の中でも「音楽療法」は、特に精神疾患に対して有効であるという研究結果が出ています。
なぜ音楽は有効なのか?
精神疾患にはなぜ音楽が有効なのかと言うと、まず音楽は万人になじみがあり間口が広く、手軽に取り組めること、音楽は感情言語と呼ばれており、対人交流が苦手な精神障がい者にとって言語を用いずコミュニケーションを可能にすること、音楽は聴くだけでも心と身体の両面へ働きかけることができること、そして趣味として利用することで、その人にとって意味のある活動になるなどの理由があげられます。
音楽療法では「音楽を聴く」「歌を歌う」「楽器を演奏する」などを行います。音楽を聴いてリラックスしたり楽しいという感情を抱く、歌を歌ってストレスを発散したり、心肺機能や循環器機能を活性させる、また楽器を演奏することで手や足などの機能回復やみんなと音を合わせようという協調性や社会性が養われるなどの効果が見られます。
機能回復だけではない効果
また、音楽の特性としてイベント性が高いということも注目すべき点です。例えばみんなで楽器を演奏したり歌を披露したりする発表会を行うという目標を立てると、機能回復や社会性が育つなど、より大きなメリットが生まれます。音楽療法は、対象者の機能回復だけではなく、彼らが「社会とつながり生活していくための支援」でもあるのです。ただし音楽がとても好きな人にとっては、自分の好みではない音楽は不快に感じる可能性があります。精神疾患の障がいは個人差が大きく、それぞれの好みの音楽を用いることで、効果を発揮すると言われています。その人が持つ音楽的背景を見定め、治療方法を考えることが重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
北海道医療大学 リハビリテーション科学部 作業療法学科 教授 浅野 雅子 先生
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