避難所を少しでも快適にするために

避難所を少しでも快適にするために

避難所=体育館で本当によいのか

地震が多い日本では、どこに住んでいても震災の恐怖から逃がれられません。それにもかかわらず、自分自身が地震に遭うことを想定していない人が多いため、避難所について本気で考えられていないのが現状です。
物資の供給を容易にするため、多くの人を1カ所に集めたい、そのためには広いスペースが要る。このような行政的な側面を優先して、避難所は学校の体育館などが利用されます。しかし、夏や冬の学校の朝礼を思い出してもらえばわかるとおり、体育館は生活の場として決して快適な環境ではありません。
夏は暑く、冬は寒い上に、カーテン、本、布類など、一般家庭にあって吸音に役立っている大抵のものが、体育館にはありません。
体育館では、人の話し声はもちろん、夜、トイレに立つ人がたてる小さな物音も大きく響き渡ります。ただでさえ気が立っている時ですから、どんな音でもうるさく聞こえてしまいます。

音環境がストレス緩和のカギ

被災した人たちのストレスと「避難所の環境をどう感じていたか」を関連づけて調べてみると、ストレスに最も大きく影響しているのは音の要素でした。
中越地震で被害に遭った旧山古志村の人たちを対象に行った調査では、公民館のような建物に避難した人たちと比べて体育館に避難した人たちの方がより大きなストレスを感じていることがわかりました。体育館の音環境は、公民館に比べて、とても問題の多いものでした。そして、音環境に問題を感じるか感じないかでストレスを感じる率は異なります。音に問題を感じる人の方が、ストレスを感じやすいのです。これらの結果として、体育館に避難した人の方がストレスを感じる割合が高かったのだと考えられます。
音によるストレスは「寒さで風邪をひく」ようなわかりやすい形では表れず、原因も表面化しにくいため、すぐに手をつけられることはありません。しかし、避難所の音環境を少しでも改善できれば、ストレスを感じる人が減る可能性が高いのです。

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先生情報 / 大学情報

福島大学 共生システム理工学類  教授 永幡 幸司 先生

福島大学 共生システム理工学類 教授 永幡 幸司 先生

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メッセージ

「良い音環境に住みたい」という思いが、僕の原動力。その思いを実現するために、音響学的(理系的)手法から社会学的(文系的)手法まで、使えるものは何でも使った研究を進めています。音が好きだからこそ、飽きずに続けられる研究です。大学は、自分が好きなことを突き詰められる場。これは、音の世界には限りません。あなたにも「より良くするために、どうしたらいいのか」を徹底的に考えられるような、自分が本当に好きな分野を見つけてもらいたいと思います。

福島大学に関心を持ったあなたは

「新生福島大学宣言」で明らかにした、「福島大学の理念」は、(1)自由・自治・自立の精神の尊重、(2)教育重視の人材育成大学、(3)文理融合の教育・研究の推進、(4)グローバルに考え地域とともに歩む、を掲げています。特に、学生教育を重視し、全学年にわたる少人数教育、共通領域科目及び専門領域科目とともに、キャリア形成論などのキャリア創造科目を含む自己デザイン領域科目を新たに設け、さらに文理融合教育を進めています。