人にとって快適な環境を追究する「建築環境・設備学」
エネルギーを使わず快適な室内環境を形成するには
あなたが設計事務所で働いているとしましょう。「鉄道駅のコンコースが暑くて困っています。空調を使わず涼しくしてほしい」という依頼があったら、あなたはどんな方法でそれに応えますか?
都市部で一般的な橋上駅はコンコースに沿って店舗や看板があるため、風の通りが悪いことが多く、熱がこもって暑くなりがちです。そこで、どこに開口部をつくれば最も通風が得られるのか、窓から直接侵入する太陽光を減らせば室内気温がどれくらい下がるかなどを、三次元空間の熱環境シミュレーションによって検討することで改善効果を顧客に提案することができるようになります。
既存建物のデータ化と室内環境の解析
既存の古い建物について、建て替えずに性能を良くしたい、という依頼に対してはどうでしょう?
古い建物では、設計図面が残っていない場合や、あったとしても手書きの図面しかないことは一般的です。しかし建物の三次元データを使った室内環境の検討を求められることがよくあります。そこで、3Dスキャナやドローンでの撮影によって得られたデータから、建物形状を簡易に作成できれば、コンピュータによる室内環境の解析を行うことができます。
技術検討に基づく提案を支える建築環境・設備学
一般住宅の場合、「ここに窓がほしい」と施主が言った場合、設計者は、知識や経験で「そこに窓を作ると室内が暑くなる(または、寒くなる)」ということを説明します。ただし、経験の浅い人や特殊な環境条件においては、一般論としての知識が通用せず失敗してしまうことも起こり得ます。理論計算による技術検討や誰もが納得できる客観的データを顧客に示すことが大切です。
建築学の学問分野は幅広く、計画・設計、建築環境・設備、材料、構造、歴史などがあります。これまで例として挙げた内容は「建築環境・設備学」です。この分野では、人にとって快適な環境の追究を目標に、空調、換気、照明や音環境などの物理的環境とそれを利用する人の心理について学びます。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東北工業大学 建築学部 建築学科 准教授 大石 洋之 先生
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