三つ子の魂は百まで? ~環境がつくる脳~
双子でも性格や好みに違いが出るのはなぜ?
脳の神経細胞の形成は胎児期に決まりますが、それをどうつなぎ合わせるか、遺伝子をどう活性化するかは生まれてからの環境などによっても左右されます。脳は先天的にすべてが決まっているのではなく、後天的にも変化します。例えば、一卵性双生児の遺伝子配列は同じですが、成長するにつれて性格や好みに違いが生まれます。これは成長する中で関わった人や経験の影響を受けるからだと考えられています。子どもの頃にどのような環境で育ったか、栄養状況はどうだったかなどによって、成長してからの脳や心のあり方が変わると考えられます。
生後のストレス耐性の獲得は?
環境のちょっとした違いを私たちは「ストレス」と感じます。しかし、ストレスの感受性は人によって違います。生まれたばかりの赤ちゃんのストレスが成長後の脳に与える影響を調べるために、マウスの母親から生まれたばかりの子どものマウスを一時的に離して、環境ストレスを与える実験をしました。毎日同じ時間に1時間、母親と子どもを離し、また戻すという実験を1週間続けた後、通常の子育て環境に戻しました。すぐに大きな影響はありませんが、成長した後にストレスを感知する受容体が脳で低下することがわかりました。人間もマウスと同じ結果になるかはまだ明らかになっていません。しかし、幼児期の環境が脳に影響を与える可能性が考えられます。
胎児期のストレスも生後の体質を変える
胎児期のストレスも、大人になった時に影響が出ると思われます。ストレスをかけた母親のマウスが子どもを産むと、赤ちゃんが成長した際にストレス耐性が低くなったり、太りやすい体質になったりすることがわかりました。胎児期の環境が原因で、大人になった時の体質を変えているのだと考えられます。しかし、これは決定されるわけではありません。先ほども述べたように、脳は後天的に変化するのです。環境によって脳が変化するということは、つまり大人になってからでも変えられる可能性があると考えられるのです。
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帝京大学 理工学部 バイオサイエンス学科 准教授 平澤 孝枝 先生
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