再生可能エネルギー開発のカギを握る「触媒」を探せ!

再生可能エネルギー開発のカギを握る「触媒」を探せ!

「触媒」が生活を支えている

暮らしに必要なものの多くは、化合物や金属を触媒として利用し、石油や石炭などの資源から変換するなどして作られています。触媒の主目的は化学反応を効率よく進めることです。例えば石油からプラスチック製品や合成繊維を作るのにも、あるいは自動車の排気ガスを無害にするのにも、触媒が使われています。環境問題が声高に叫ばれる昨今では、いかにエコロジカルな触媒技術を確立するかもテーマとなっています。

めざすは水素から、その先の一歩

二酸化炭素をなるべく出さない低炭素社会の実現に向け、家庭用燃料電池で、水素と酸素から電気と熱を作るコージェネレーションシステム「エネファーム」や、太陽光や風力、水力といった再生可能エネルギーが注目を集めています。しかし蓄電技術が追いついておらず、それらのエネルギーを作ることと同じく貯蔵と運搬をどうするかも問題となっています。現状では、化学物質で最も効率よくエネルギーを貯められる水素を使った電池などが開発されていますが、水素は軽い一方容積が大きな気体なので、貯蔵や運搬に不向きです。そこでさらに先を見据え、水素を含みながらも液化しやすいアンモニアやメタノールを使うことが模索されています。そうした水素やアンモニアを効率よく作るための触媒研究も盛んで、化合物だけでなく電極触媒を使うなど、さまざまな試みが行われています。

再生可能エネルギーの未来と日本の課題

ドイツやデンマークでは風力、ノルウェーでは水力がかなり前から再生可能エネルギーとして導入されている一方、日本はやや遅れています。しかし地熱エネルギーの潜在的なエネルギー埋蔵量は世界有数で、仮に自国での導入が進まなかったとしても、技術だけは開発を進めるべきでしょう。2050年までに世界全体の電力供給量は、約65%を再生可能エネルギーに転換していかなければ地球環境は立ち行かなくなるとも言われています。技術の輸出という観点から考えても、再生可能エネルギーへの取り組みが重要になるのです。

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成蹊大学 理工学部 理工学科 教授 里川 重夫 先生

成蹊大学 理工学部 理工学科 教授 里川 重夫 先生

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触媒化学、無機材料化学

メッセージ

理科が扱う事象はさまざまな分野につながっていることが多く、化学や物理といった特定の1科目だけで解決できることは限られています。医学などはよい例で、人間を診るという意味では生物ですが、実際に病気を治すことを考えると化学の知識が必要です。さらに大きく、環境のように地球規模のテーマを扱うならば、社会情勢や経済など、理科の垣根すら越えた見識が求められます。好きな科目だけではなく、苦手な科目もきちんと学んでおくと、その知識がいずれ役立つときが来るでしょう。

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