つながり方一つで薬が毒に変わる
同じ分子構成なのに甘みがまったく違う炭水化物
砂糖は甘い。そんなことは誰でも知っています。では、甘くない砂糖があることを知っていますか?
例えばブドウ糖の化学式はC6H12O6で、炭素が6個に水素が12個、加えて6個の酸素からできています。なぜ人が砂糖を甘いと感じるのかと言うと、舌に甘みを感じる部分があるからです。例えばブドウ糖のようにここにぴったりとはまる分子構造になっているとき、人は甘みを感じるのです。ところが同じように炭素6個、水素12個、酸素6個からなる物質でも、ブドウ糖とは違う構造になっているとどうなるのでしょうか。可能性としては炭素、酸素、水素のつながり方はいくらでも考えられます。
実は組み合わせ方が変わると、甘みの感じ方も変わってくるのです。構成要素(原子)がまったく同じでも、その構造が変われば舌の甘みセンサーにきっちりはまらないケースがあるからです。もっとも砂糖が少々甘くないぐらいなら、何の実害もありません。しかし、これが薬だったら問題です。
原子のつながり方の違いで毒性が出ることも
同じ要素からできていてもその結合の仕方によって、物質の特性は変わってきます。薬も同じです。薬はブドウ糖のように単純な化合物ばかりではなく、より多くの原子が複雑に組み合わさったものもあります。組み合わせの順番が違えば効果が変わるのは言うまでもなく、仮にまったく同じ組み合わせでも原子のつながる向きが異なるだけでも効果は変化します。
ややこしい話ですが、分子は立体的な構造をしています。仮に炭素、つまりCを真ん中として、そのまわりに水素や酸素、窒素などがくっついて一つの分子ができているとしましょう。このとき、どれか一つ、例えば窒素が炭素とつながる向きが変わるだけで物質の性質は変わってしまいます。これが薬ならば効く薬や効かない薬ができてしまったり、最悪の場合は薬を作っているつもりが毒になってしまったりもします。そんな危険を未然に防いで分子をつくるのも有機化学の役目なのです。
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