イスは「環境を作り出す装置」でもある!
イスのデザインを考えてみよう
あなたはどんなイスを作ってみたいですか? 自分の部屋の雰囲気にマッチしたイス、人間工学を駆使し快適さを究極まで追究したイス、ロッキングチェアのような人間の欲求を満たしてくれるイス、イタリア人デザイナーのジオ・ポンティが作るイスのように無駄なものを排し、極限まで軽くしたイス、もちろん、座るという最低限の機能を満たしていれば、どんな発想で作ってもかまいません。ただし、イスにはプロダクト(製作物)という側面だけでなく、環境を作り出すという側面もあります。
イスは「環境=社会」を作り出す
例えば、階級社会があってその頂点に王様がいた時代の玉座と言われる王が座るイスは、ほかのものよりも高い位置にありました。そこには高い位置から、被支配者を見下ろすという意味があります。イスは、「環境=階級社会」を作り出していたのです。一方、民主的な社会では、イスの高さは相手と同じです。これは、お互いが対等であることを示しています。このように、イスというプロダクトは、それによって環境を変えてしまう強い存在でもあるのです。ですからイスを作ることを考える場合、単なる機能だけでなく、環境とどういう関係を持つかを意識する必要があるでしょう。
イスはプロダクトと建築の中間的存在
現在では、イスはインテリアの中の一つのプロダクトであると同時に、もっと広い建築の一部だと考えることができます。イスに個性があれば、それに合わせて建築全体のデザインも変わってくるでしょう。逆に、建築デザイン全体の方向性が決まっている場合は、イスは個性をなくしまわりに溶け込むことも必要かもしれません。イスはプロダクトと建築の中間的な存在なのです。イスを考えるとき、どうしても自分にとってイスとは何かという発想から考えてしまいますが、「環境を作り出す装置である」という認識があれば、さらに面白いデザインが可能ですし、先人が作ったイスを新たな視点で見ることができるかもしれません。
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