椅子ひとつでも空間は変わる 「体験を作る」デザインとは

椅子ひとつでも空間は変わる 「体験を作る」デザインとは

空間デザインは体験のデザイン

すてきな洋服を買って家に持ち帰った時に、家の中で見るよりもお店で見た時の方が魅力的に見えたという経験はありませんか? もしかするとそれは、洋服だけでなくお店の空間デザインも含めてすてきだったから、そう見えたのかもしれません。
私たちが普段生活している空間は、家の中も外も施設もすべて何らかのデザインがなされています。そのデザインが街に影響を与え、私たちの感じる体験が変わってきます。空間デザインは、さまざまな施設の内装全般の設計や、家具などの製品を含めてデザインすることで、その場所を訪れる人たちの体験を豊かにする学問です。

椅子ひとつでも印象や体験は変わる

一言で空間デザインと言っても、商業施設と美術館のような公共施設では、デザインをする時に意識することが違います。商業施設では、空間の中の印象に残る部分はどこか、それがすぐに伝わるかも大事な要素です。音楽で言うと「サビ」の部分にあたります。一方、公共施設では長い年月使用することを想定した素材選びやデザインが重要です。例えば美術館であれば、そこに展示される作品が魅力的に見え、来館者にゆったりとした時間の流れを感じてもらえるように隅々までデザインされています。そこに置かれる椅子ひとつだけでも、空間全体の印象や来館者の体験を左右するのです。

これからの時代に求められるデザイン

今まではどちらかと言うと、非日常が感じられる派手な形や色がデザインだと思われている傾向がありました。最近では、無駄なものを排除し日常に溶け込んだ普遍的なデザインが重視されるようになってきています。また、自然環境への関心の高まりから都市の中にどうやって自然を取り戻すかという動きも顕著になってきました。そうした自然に対する関心をキャッチして、どのように空間デザインに反映させるかが今後の命題となるでしょう。過剰に派手にせず自然を大事にすることは、SDGsにもつながります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

多摩美術大学 美術学部 環境デザイン学科 教授 米谷 ひろし 先生

多摩美術大学 美術学部 環境デザイン学科 教授 米谷 ひろし 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

空間デザイン学

先生が目指すSDGs

メッセージ

ぜひ「自分の好きなことは何か」について真剣に向き合ってほしいです。好きなことで生きていくことは難しいのではないかと悩んでいるかもしれません。私も高校生の頃に大人からそう言われたことがあります。でも、あなたが情熱を傾けられるものは、あなたにしかわかりません。周りに流されず、自分で考えてみましょう。空間デザインは、理系の仕事だと思われるかもしれませんが、実は図面を書くよりも発想力が重要な分野です。デザインに興味があるなら、理系じゃないからと諦める必要はありません。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

多摩美術大学に関心を持ったあなたは

1935年の創立以来「自由と意力」を理念とし、社会に数多くの優れた芸術家やデザイナーや教員を輩出し続ける、日本を代表する美術大学のひとつです。大学院と美術学部のある八王子キャンパスでは約4,000人の学生が学び、作品制作する上で理想的な施設・設備を整えています。