鹿児島とインドに伝わる疱瘡治癒祈願の踊り

鹿児島とインドに伝わる疱瘡治癒祈願の踊り

鹿児島だけに伝わる「疱瘡踊り」

舞踊は、もともと生命の欲求の身体表現であり、また生命を癒やすための踊りも世界各地に伝承されています。例えば、鹿児島県には、疱瘡(ほうそう:天然痘)の治癒祈願のための「疱瘡踊り」が県内各地に残っています。これは、江戸時代末期に伊勢信仰と関連して始まったとされており、当時、不治の病として恐れられていた疱瘡を「疱瘡神」の仕業と考え、その神によそへ移っていってもらうための「もてなし」として、また疱瘡そのものを神格化して疱瘡神と共に去ってもらうために踊るものでした。

インドにもあった疱瘡治癒祈願の舞踊

疱瘡治癒祈願のダンスは、インドにもあります。鹿児島の「疱瘡踊り」が神をもてなすための踊りであるのに対し、インドでは、踊り手自身が「疱瘡神」になります。インドでは疱瘡を与える神と治す神の2種類いると考えられています。また、踊り方も、日本は「まねき手」と言われる、手をひらひらさせる動作が特徴ですが、インドの場合は、神になるために行う、地面を足で踏みならす動作が特徴です。さらに、日本では女性が踊りを伝承してきましたが、インドはカースト制度の最下層であるかつての「不可触民」と呼ばれた層の男性が世襲で伝えてきました。
そうした違いがある一方、共通点もあります。両者は疱瘡にする、および疱瘡から守るという両義的な神に対して踊られ、「ケガレ」である疱瘡の排除を願う舞踊であるという点です。

伝統舞踊の現代的な意味を探る面白さ

1980年にWHOが撲滅宣言し、天然痘は消滅しましたが、踊り自体は、日本でもインドでも続けられています。それは、踊りが伝承されていく中で、病気の治癒祈願以外の新たな意味あいを持つようになったからではないかと考えられます。そうした今日的な意味を含め、伝統舞踊が人々の間で果たす役割を知ることが、この学問の面白さと言えるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

フェリス女学院大学 グローバル教養学部 文化表現学科  音楽・身体表現専攻  ※2025年4月開設 教授 高橋 京子 先生

フェリス女学院大学 グローバル教養学部 文化表現学科 音楽・身体表現専攻 ※2025年4月開設 教授 高橋 京子 先生

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舞踊学、スポーツ人類学

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メッセージ

新型コロナウイルスの影響で、ダンスなどの芸術文化は痛手を負いました。その結果、生活の質が低下したと多くの人が実感しています。
何かを好きになって夢中で取り組むことは、心の健康のためにも必要なのです。この先あなたのモチベーションが下がるような事態が起きたとしても、好きなことをあきらめるのではなく、追究するための方法を考えましょう。ダンスを人類学で探ることもそうしたアプローチのひとつです。新たな発見があるので興味を持ってもらえるとうれしいです。

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