食を広く深く探求し、未来へつなげる食文化デザイン

食を広く深く探求し、未来へつなげる食文化デザイン

食文化デザインとは?

食文化デザインとは、食を通じた新しい体験価値を創造する分野です。例えば、農家や料理人、アーティストが協力して、地域の特産品を使った食のイベントを開催し、食を通じた新たな場を生み出す取り組みが進められています。
食は単に栄養を取るための行為ではなく、多様な側面を持つ体験であり、文化やデザインと深く関わっています。食器やテーブル、空間演出を変えたり、食の場に音楽やアートを取り入れたりすることで、食事の体験価値は大きく変わります。食文化デザインは、食材や調理法の価値を見直すだけでなく、食を中心とした広範な文化を視野に入れて、社会全体の活性化につなげていきます。

地域の風土を生かす

食文化デザインの実践では、地域ごとの特性を生かすことも重要です。例えば山形県は日本有数の伝承野菜や在来種の宝庫として知られています。ここでは地元の農家と直接契約を結び、「野菜本来の力とおいしさ」を引き出す飲食店づくりや、化石燃料を使わず薪火(まきび)で料理をするなど、環境にも配慮した取り組みが行われています。
また、地域の食文化は観光資源としても注目されており、その土地でしか味わえない食体験を求めて旅をする「ガストロノミーツーリズム」も広がっています。食文化デザインの視点から地域の特性を見直すことで、持続可能な社会づくりにつながる新たな可能性が開かれていくのです。

未来の食卓は?

持続可能な食のために、植物工場や、昆虫を利用した食品といった研究が行われています。これにより、地球環境への負担を減らしながら、新たな食の選択肢を広げることが期待されています。一方で、伝統的な発酵技術など、古くから受け継がれてきた食文化への再評価も進んできました。近い将来、私たちの食卓では伝統技術とフードテック(食の最先端技術)が融合しているかもしれません。こうした未来の可能性を探りながら、人間が本来持っている五感を大切にした食体験を創造していくことも、食文化デザインの役割です。

参考資料

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東北芸術工科大学 デザイン工学部 企画構想学科 食文化デザインコース ※2026年4月設置予定 教授 岩井 天志 先生

東北芸術工科大学デザイン工学部 企画構想学科 食文化デザインコース ※2026年4月設置予定 教授岩井 天志 先生

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食文化デザイン、映像デザイン

先生が目指すSDGs

メッセージ

食べることは生命維持のための行為ではありますが、それだけではありません。毎日行う食事の背景に少しだけ意識を向けてみると、そこにはさまざまな要素や人とのつながりがあることに気づくでしょう。私自身、学生時代は食材への意識は低く、安くて満腹になるものを求めていましたが、体調を崩した経験から、食べるものの大切さを実感しました。もっと早くこうした学びがあれば違う生き方ができたと思います。食について共に考え、実験し、新しい価値をつくり出していく「探求の旅」に参加してみませんか。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東北芸術工科大学に関心を持ったあなたは

1992年に開学した公設民営の大学です。デザイン工学部と芸術学部で15学科・コースがあり、「藝術立国」を教育理念に、「人と自然を思いやる想像力と、社会を変革する創造力を身につけ、自らの意思で未来を切り拓く人材の育成」を行っています。4年間で以下の能力を磨き、現代社会の抱える課題を解決できる人材育成を使命としています。
1. 想像力:本質を見ようとする姿勢、純粋な目
2. 創造力:想いを形にできる力
3. 意志:問題提起と解決への強い意志
4. 社会性:社会的・職業的自立のための能力・態度