デザイナーは、コンピュータで「新しい脳」を手に入れた
コンピュータでできるようになったこと
今では、デザインでコンピュータを使用することは当たり前になっています。確かに、コンピュータでは色を一瞬で変えたり、前に作ったものと新しいものを比較したりと、これまでは簡単にできなかったことが可能になりました。例えば、以前はものを上から見たらどう見えるか、ということを考えることはあまりありませんでした。しかし、3次元のCG(コンピュータグラフィックス)を使えば、現実には見ることのできない「鳥の目」を手に入れることもできます。
これは表現のためのツールが単に進化しただけなのでしょうか?
コンピュータは新しい発想も可能にした
コンピュータは、デザイナーの便利な道具になっただけではなく、新しい発想を可能にしています。以前は、自分の目で見えることをもとに想像していましたが、3次元のCGを使うことで仮想空間の中にいる自分に対してもリアリティを感じるようになっています。例えば、広島市の新しい市民球場に至る歩道は、新球場を目玉に見立てた鯉のぼりの形になっています。これは、鳥の目がなければできなかった発想です。また、インテリアや建築物に対する照明もその一つです。照明の方向や強さなどを自在に変えられるため、形や色を決めるための要素が多くなり、新しい発想を生み出しています。
今までの脳に「新しい脳」が加わった
コンピュータでは、操作の誤りが新しい表現につながることもあります。特に操作が未熟なときに起こりがちですが、思いがけない形や色がスクリーン上に出現し、それを表現に採用することがあります。この場合、色や形を作ったのはコンピュータですが、それを採用したのはデザイナーの個性です。
コンピュータを使っていると、昔よりも頭を使わなくなるのではないかと心配する人もいるかもしれません。しかし、実際には今までの脳に「新しい脳」が加わるという感覚です。この新しい脳は、技術の発達によってますます進化しているのです。
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