生活に根ざした地域独自の製品を生み出す

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日常生活の中で使われる木材

長野県には、伝統的な「木曽漆器」だけでなく、「松本民芸家具」「軽井沢彫」のような現代の工芸もあります。それらはイギリスの伝統を参考にしていたり、別荘を持つ欧米人のニーズに応えてはじまったりしたものです。これらは、自然豊かで林業が盛んな長野県ならではの技術です。
木という素材に注目し、ライフスタイルや暮らしの中での使い方から家具を考えることによって見えてくる文化があります。例えば、椅子はどこの家にでもある日常的な家具ですが、座り心地、美しさ、歴史、構造、材質、作り方など、いろいろな観点から考えることができます。

木の表現の奥深さや木材加工の伝統を理解する

樹木、木材、家具、それぞれに携わる林業関係者・木工職人・ユーザーと順を追って見ると、木の表現の奥深さや、産業の伝統が理解できます。まず、森を歩き、どんな樹木があるかを知り、身近な木の種類やその流通について調べると、課題が見えてきます。地元の工房や工場を訪ねて職人さんに話を聞いたり、簡単なクラフト雑貨を作ったりしてみると、木の扱い方や加工する技術の面白さがわかります。
しかし、近年、日本では木材は輸入木材に頼っている現状があります。また、生産拠点まで海外に移してしまっているところもあります。しかし、それでは大切な文化と産業が失われてしまいます。

地場産業と連携して木工品を作る

さまざまな木工文化について考えてみると、その材料となる木材を生み出す森林の貴重さが理解できます。「自然はつくることができない」とわかれば、おのずと意識は自然保護へと向かうはずです。また、優れた伝統工芸品は人と人とのつながりの中で生まれ、育まれ、継承されています。そうした文化と産業を守るためにも、地方創生の視点から、デザインの力で木工品の魅力を全国や世界へ発信していくことが求められています。そのために、地場産業と連携し、今のライフスタイルにあった木工品を生み出していくことが大切なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

長野大学 企業情報学部 企業情報学科 教授 石川 義宗 先生

長野大学 企業情報学部 企業情報学科 教授 石川 義宗 先生

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地域文化学、産業学

先生が目指すSDGs

メッセージ

ものづくりは、人と人とのつながりから生まれます。作る人、売る人、そして、買って使う人がいます。そのため、人との関わりで得た気づきから新たな商品やデザインを考えられることが望ましいのです。長野県は、首都圏まで新幹線で約1時間半なので、自然を身近に感じながら学びつつ、首都圏のマーケットに足を運ぶことができます。学生たちも首都圏と長野県を相対的に理解し、スケールの大きな視野を持っています。長野大学は公立になりました。今後はさらに地域との関わりを強め、その魅力を発信できる存在になると思います。

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長野大学は、1966年に地域の熱い期待を背負って誕生した「地域立」の大学です。本学は地域にある課題を発見し、地域とともに解決していく実践的な学びを大切にしています。地域には豊かな自然環境や歴史が宿る文化遺産、経済を牽引する産業や観光資源、安心して暮らせるまちづくりなど学びの要素があふれています。地域社会をフィールドに、主体的に考える力や、問題に対して多面的に取り組む力を養いながら漠然とした問題を明確化し、逆境に立ち向かっていける足腰の強い人材を育成します。