美術・デザインでは、さまざまな表現手段を通して社会に働きかけるための、感性と表現技術を磨きます。美術や写真・映像、建築・デザインなどの系統があり、いずれもデッサンや自由制作などの実技の指導が重視される一方、豊かな感受性と創造性の習得のため、関連する幅広い分野の知識や教養が求められます。美術は油絵や版画、彫刻などを扱い、デザインは雑誌などの印刷物やWebサイト、工業製品など、より生活に近いものを対象とします。
芸術学は、芸術史・芸術理論を学び、芸術の本質を学問的な見地から探究します。「美とは何か」「美しいと感じることはどういうことなのか」などを考える美学分野や、美術・芸術に対する意識が、時代や地域によってどのように変わってきたのかを体系的に学ぶ美術史研究といった分野があります。
一般企業の広告宣伝部門や制作部門で活躍するほか、商業デザイン・工業デザインに携わる人も多数います。画廊、美術系出版社、映像制作会社などの芸術や表現に携わる職場で活躍する人や、学校、美術教室などで教職に就く人もいます。
武蔵野美術大学 造形学部 基礎デザイン学科 教授 板東 孝明 先生
ドームのような球体構造は皮膜そのものであり、支柱がなくても自立します。柱のある垂直水平構造(圧縮材のみ)は自然の中にはほとんど存在せず、自然物は圧縮と張力がつり合った構造になっています。球体構造もそのひとつで、巨大な球体を見ると人間はなぜか「この中に入ってみたい」という本能的な興味を抱きます。その中に入ると、包み込まれたような安心感を覚えます。また、年齢が若いほど、球体構造のデザインに直感的な面白さを感じるようです。感受性の豊かな子どもたちは、無意識に「自然の構造」を感得するのでしょう。
20世紀のアメリカで、工業デザイナーのバックミンスター・フラーが「シナジェティクス」という概念を提唱しました。フラーは、人類が無自覚に自然を破壊する文明社会と、欲望のままの生活環境を続けていると、地球が蓄積してきた財産である石炭や石油など、化石燃料が枯渇(こかつ)してしまうと警告しました。そのため人類は地球の資源を消費する一方の生活から自立していかなければならない、と作品を通して訴えました。そのとき構造モデルとしてフラーが用いたのが、球体や多面体などの自然に存在するかたちでした。
フラーが実現しようとしたデザインに「テンセグリティ構造」があります。ワイヤーとバーが互いに引っ張り合うことで張力を生み出すため、支柱がなくても自立します。これは自然の中にある構造です。これをデザインに取り入れ、実際に見たり触れたりしてもらうことによって、人々に未来の構造を直感させることができます。テンセグリティ構造を用いた作品は軽くて弾力があり、揺れにも強いため、いずれはさまざまな構造物、とりわけ地震で壊れないような建築物に応用できるでしょう。
作品を通して未来について考えるきっかけを提供したり、世の中に埋もれた本当に価値あるものを掘り起こして社会に伝えたりすることも、デザインの大切な役割なのです。
長岡造形大学 造形学部 デザイン学科 准教授 吉川 賢一郎 先生
地方に行くと、昔に比べてオシャレなパッケージの名産品やお土産が増えました。同じ商品でも見た目の違いで売り上げが変わるという考え方が浸透したからで、特にブランド米などはプロのデザイナーが手掛けたパッケージが増えています。その際、デザイナーが考えなければならないのは、商品の本質をきちんと伝えることです。オシャレでセンスのいいものを作るのがデザインだと考えられがちですが、「物事の本質を伝える」ということが最も大事な要素なのです。
商品だけでなくイベントなどでも、例えばフリーマーケットのチラシをショッピングバッグ調にしてみるといったように、一目で何のデザインかわかる必要があります。手に取った人が腑(ふ)に落ちる、見た人を「なるほど!」と思わせるのがポイントで、それがないデザインはどんなにオシャレでもメッセージは伝わりません。
世の中の流れも「何を作るか」ではなく、「なぜ作るのか」に重きを置いてデザインされるようになりました。その中心にいるのは、もちろん人間です。人間がいかに使いやすか、暮らしやすいかを考えて作られるヒューマンセンタードデザインはその最たる例と言えるでしょう。デザインとは個人の感覚から生まれるものではありません。作る目的をきちんと把握すれば、作るものの方向性もおのずと決まってきます。そして、そこに良いデザインが生まれるのです。
近年、ビジネスの現場で「デザイン的な思考」が注目されています。何かをデザインするように、情報を取り入れながら物事を整理し、問題を的確に見つけ出し、課題を解決しようというものです。一見、実践するのは難しい印象を受けますが、警察が事件の背景を調べながら犯人を探り当てて逮捕にこぎつけるのと同じようなものです。
デザイン的な思考は特にものづくりの現場において顕著ですが、うまく応用すれば社会の諸問題に関しても応用できる可能性があるのです。
鳥取大学 地域学部 地域学科 国際地域文化コース 准教授 筒井 宏樹 先生
絵画はどのように評価されるのでしょうか。モナリザを描いたレオナルド・ダ・ヴィンチが生きていた15~16世紀は、財力のあるパトロンが絵を依頼して、画家は報酬を得ていました。今と違って、絵のテーマも、大きさも、どこに描くかも、画材もある程度決められていて、画家の自由度は高くありませんでした。画家は社会の中の一職業だったのです。18世紀くらいまでの絵の評価には、規範がありました。大きな画面に高価な画材を使って、キリスト教やギリシア神話の重要な場面を描くのが「名画」の条件だったのです。
ところが、19世紀になると、誰からも依頼されなくても、自発的に絵を描く画家が登場します。芸術が自己表現活動になり、画家たちは、よりよい絵、誰も描いたことがないような絵をめざして格闘するようになりました。マーケットの中で絵が売買されるようになります。評価の規範が崩れていき、一人ひとりめざす芸術が違うこともあり、評価が難しくなりました。モナリザが評価されたのは、このような19世紀以降の芸術観によるものです。モナリザは自発的に描かれた絵です。技法的にも内容的にも注目すべき点がありますが、実はモナリザを有名にしたのは20世紀前半に起きた盗難事件でした。かつてフランス王室が保管し、その後ルーヴル美術館が所蔵していた天才レオナルド・ダ・ヴィンチの絵が盗まれたという事実が評価を高めたのです。
19世紀以降の絵画の評価には、このような偶然の要素があります。美術史的には「印象派」などのムーブメントがありました。戦後のアートはニューヨークが中心です。本流の中心にいる画家は注目を浴び評価されますが、その枠組みから外れた画家、あるいは傍流は評価されず、忘れ去られるような場合もあります。
しかし、今はこのような美術史に対する見直しが行われています。注目されていなかった国や地域の画家、忘れ去られた芸術家の掘り起こしが行われているのです。
デッサンなど技術部分だけでなく、思考方法などの視点からの教育や、国際交流に重点を置いているため。
学科の風通しの良い特徴から、さまざまな分野を組み合わせた作品が制作できると思ったから。
プロダクトデザインの中にテキスタイル・ファッションコースが学べる点が魅力的でした
建築士の国家資格をとる資格をもらえる上に、建築に必要な知識、芸術的なデザインなども同時に学べるということで自分にとてもあっていたから。
他学部、他コースと併用で様々な資格がとれるから
地域学部で地域のことだけでなく法律やマーケティング論など幅広く学ぶことができ、地域調査実習として地域の方とコミュニケーションもとれるから。
音楽について奏者という立場以外からのアプローチで多くの面から学べるのはここだけだったから。
自分の学びたい室内音響学を専門的に学べる唯一の大学だから
多摩美術大学 美術学部
インテリアからランドスケープまで、幅広い空間の勉強を、選べるところ
芸術の力で社会の様々な課題を解決していこうという、新しい方向性を示しているところに最大の魅力を感じました。