建築史から新しい時代の建築を導くヒントを学ぶ
建築の歴史を学ぶ
建築学では建築史という文系的な分野を必ず学びます。過去の建築物がどのようにして作られてきたのかを知ることは、建築全体を理解するために非常に役立つからです。しかし、それは単に過去の建築物をまねるためではありません。建築家たちが時代を代表する建築を生み出すために、どのように工夫し、努力してきたのかを理解することが、新しい発想を生み出すための重要な素養となるのです。
建築家オットー・ワーグナー
18世紀の産業革命とそれに続く19世紀初頭の工業化は、建築にも大きな影響を与えました。この時代に活躍した建築家の中で、オーストリアのオットー・ワーグナーは特に重要な存在です。彼が生まれ育ったウィーンは近代化が進み、人口が増加する中で、街の無秩序な広がりに伴う課題に直面していました。ワーグナーは都市計画や交通網の整備を通じてこれらの課題に取り組むと共に、従来の建築材料である石ではなく、鉄やガラスなどの工業材料を使った、軽くて強い建築物を提案しました。これらは、当時としては斬新な建築でしたが、彼はただ自分のデザインを主張しただけではありません。それらは当時の課題に対する解決策であり、手に入りやすい材料を使用した結果として生まれた必然的な設計だったといえるでしょう。ワーグナーは、伝統的な建築様式から現代の建築への過渡期をリードした建築家として評価されています。
現代日本も過渡期にある
ワーグナーが解決した課題は、現代の日本にも重なります。少子高齢化や環境対策のような社会問題は、建築からも解決策が求められています。さらに、デジタル技術の進化は、建築技術に再び大きな変革を起こしました。例えば、3Dプリンターを利用した建築はすでに実用化に至っています。こうした状況からも、現代は再び変化の過渡期にあるといえます。建築史から過去の建築家たちが過渡期を乗り越えた際のアプローチを知ることが、新たな時代の建築を導くヒントとなるはずです。
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