特殊な装置でリハビリテーション~歯科技工士に求められる技術~
顔や顎の形が変わる患者さんをサポート
顎顔面補綴(がくがんめんほてつ)とは、がんなどの病気や事故で口の中や顔の形に欠損が生じる患者さんに対して、それを埋めるような特殊な義歯や、「エピテーゼ」と呼ばれる体の表面につける人工物で補うことです。顔や口腔内にはとてもたくさんの機能が集まり、繊細な形や動きがあるので、作ったらさあ終わりとなるのではなく、変化する患部に合わせて調整したり、使いながらリハビリテーションしたりする作業がともないます。ですから歯科技工士は、手術前から歯科医師とともに、患者さんの状態を把握しながら装置を準備することが必要です。口の中が変わることで、食べ方に工夫が必要になったり、会話がうまくできなくなったりすることは患者さんにとっては大きなストレスです。患者さんの気持ちを理解しながらリハビリを進めるのは、カウンセリングのような側面もあるかもしれません。
3Dやグラフィック作成ソフトなどを駆使
歯科の詰め物や差し歯の型と同じように、顎顔面補綴にも型取りが必要です。しかし今までの方法では、体力や時間の面で、医師にも患者さんにも負担が大きいものでした。最近ではコンピュータのグラフィックイメージを作成するCAD/CAMや3Dのソフトを利用できるようになってきました。手術の概要を把握したり、装置の説明をする際、3Dソフトで立体的に表現できればスムーズにいくことも多いのです。
装置を作る技術とセンス
顎顔面補綴は手術を担当する外科医師、装置を考える歯科医師と装置を作る歯科技工士の共同作業で進んでいきます。ですからチーム医療の連携が大事になります。
歯科技工士は材料や工法、骨の形などの知識はもちろん、手術によって想定される形を把握する判断力も身につけなくてはなりません。また装置の製作やエピテーゼで表面をきれいに作る作業はとても繊細で、エピテーゼはさながら特殊メイクのような技術を使います。形を作ったり、色づけをする美的センスも求められるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京科学大学 医歯学系(旧・東京医科歯科大学) 歯学部 口腔保健学科 口腔保健工学専攻 准教授 大木 明子 先生
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